10月12日~13日に、青森市において、全国市議会議長会主催の研究フォーラムが開催され、全国から2,408名の市議会議員が参加しました。2日間の内容(要旨)については、次の通りです。
12日(1日目)
1.基調講演「二元代表制と地方議会改革」:増田寛也氏(元総務大臣・現野村総合研究所顧問他)
(1)災害と議会
災害と地方自治について、被災した方々は、住居・お店・工場など、元の場所に戻ってよいのか、決め難い状況にある。震災から7ヶ月が経って、生活するお金も底をつき、待ってられない状況。どうやって解決していくのか。防潮堤、どの高さにして、まちづくりを進めていくべきか。国の3次補正の遅れ、被災地に影響ある。早く成立させるべき。1次補正は、被災地に本当に必要なものを、2次補正は、予備費を使った、そして、3次補正が、本当の復興に向けたもの。しかし、11月に成立しても、被災地は厳しい冬に入るため、執行が難しい。
復旧から復興へは、地元との話し合い、市町村の意向が重要。岩手県の大辻町では、町長が津波で亡くなった。町の職員も1/4は亡くなり、行政当局にとって打撃大きかった。まちづくりの話し合いが出来ない状況、そして、町長が亡くなったことで、強い意思決定が出来ない。副町長など理事者はいても、選挙で選ばれたわけではないので。
一方で、選挙で選ばれた議員はいる。住民の代表として、活躍するべき。どのように役割を果たすべきか、議会の存在意義、特に非常時に問われる。戦争状態と同じ状況の非常時こそ、議員が中心になって、まちづくりの方向性を決めていく。地域での話し合いを進めていく、その意見集約が議員の役目である。十分な議論は平常時のもの。今回の被災地の避難所でも、しばらくすると、誰かが音頭を取って、自然とルールがつくられる。地方自治の原点といえる。平常時と緊急時を区別して、緊急時の民主主義を考えるべき。
地方制度調査会が復活した。そこで、住民自治を議論していくこととなる。緊急時の基礎自治体の役割も議論されるだろう。奈良県十津川村の様な大災害が、今後、いつ起きるかわからない。人命救助、議会が役割を果たすこととなる。全国を歩いてみると、どうも議会の姿が、見えないという声が多い。災害時こそ、議会が相当の役割を果たさなければ、議会の存在意義が問われるだろう。
読売新聞のアンケート調査の結果が示されたが、今回の大震災で、あなたが評価したのは?の問いに対して、最も評価が高かったのが、自衛隊で82%。逆に低かったのは、中央政権6%、国会3%となっている。しかし、自衛隊も政府の指示で活動した国の組織であるのに、と思う。被災地の自治体は42%だったが、これを首長と議員を分けてアンケートしたらどうなったのか?
(2)首長VS議会
地方議会には、そもそも与野党はない、地方はすべて野党であるべき。国会は、総理大臣の指名があるので、与野党と分かれる。市議会は、議員が市長を選ぶのではないので、与野党が生じようがない。市長の提案をチェックするのが議会の基本ルールである。
地方議会の状況について、朝日新聞が伝えたが、市長の提案を丸飲みする。議会が政策的な条例を提案しない。議員の投票行為を公開しない。そういった議会が多いと。議員の投票行為について、会派拘束をとっているとしても外に見えない、議員個々の考え方が示されないケースが多い。会派内の議論の様子もわからない。だから、議会基本条例で議員間討論をするべき。
予算の減額や政策提案、市民は求めている。首長VS議会なんで、おさめられないのか?今は、どこの自治体も財政が厳しいため、どこを切っていくのか!となっている。だから、財政に余裕があったときのように、議員や議会側の要望を首長が受け入れられなくなった。また、今は政治全体が点取り傾向にあり、議会の領域に首長が踏み込んでいる。議会側から改革議論をし、多くの場面を市民に見せていくことが必要。通年議会や夜間議会もその一つの手段である。
首長と議員、どちらが、住民の代表をしているのか?首長は、ワークショップ形式で開かれた政策決定の流れを作っている。議会がチェックしていく上でも、もっと議会が開かれるべき。住民の代表と言うなら、住民との接点をもっと考えるべき。議員個人ではなく、問われているのは、議会。議会として住民との接点を持てているか?決まったことを、どのように伝えていくか、議会報告の場を設けていかないと、首長との差が開いてしまう。どれだけ効果があるか、わからないが、説明の場を設けて、次回の議会に向けた議論をすることも必要ではないか。
(3)住民自治と直接民主制
地方議会で当面出るのは、税条例の話し。今は、一括交付金だが、今後、地方税増税の必要に迫られる。名古屋は減税10%を恒久的なものとしたが、税は単年度で決めていくもの。税に応じてサービスが決まるものではない。公共サービスはどうあるべきか議論をして、どのように負担していくかを考えるべき。名古屋は逆!どこをカットするのかと筋が違う。しかし、市民の驚異的な支持を受けているのも事実。議会の権能を拡大し、住民自治を強めて、住民投票により判断できる制度もある。議会の説明・役割が問われている。
(4)まとめ
非常時こそ、議員もでしゃばり過ぎるぐらい役割を果たすべき。平常時は難しい地域課題を集約し、より良いまちづくりをしていく。住民への公開、地域に出ていく首長サイドのやり方と競争し凌駕していくぐらいに議会としてやっていくべき。
ポピュリズムに陥らないように!減税・議員定数・議員報酬など、議会活動が目に見えるようにする。厳しい税条例の必要性についても、考える必要ある。分権は地域で物事を決めていくこと。全国政党が地域課題をどうこなしていくか、会派での投票行為をオープンにして、地域での決定過程を公開していくこと。
2.パネルディスカッション
基調講演に続いて、「地方議会と直接民主主義について」をテーマに、次のメンバーでパネルディスカッションが行われました。
★コーディネーター 新藤宗幸氏[(財)東京市政調査会研究担当常務理事]
●パネリスト 宇賀克也氏[東京大学法学部教授]
●パネリスト 金井利之氏[東京大学公共政策大学院教授]
●パネリスト 青山彰久氏[読売新聞東京本社編集委員]
●パネリスト 花田明仁氏[青森市議会議長]
昭和40年代後半ぐらいから、広聴機能が強化され、市長への手紙、市民集会など直接市民から意見を聞く流れが出来たが、当時、議会は反発していた。今では、市町村合併や大規模公共施設の建設などについて、住民投票も行われている。義務付け枠付けの見直しがされ、今後、どのような条例をつくっていくのか?議会主導の条例をつくっていけるのか?地方制度調査会での議論がスタートしている中で、いくつかパネリストから意見や考えを伺う。とし、ディスカッションが始まりました。内容の抜粋については、次の通りです。
◎各地で住民訴訟が起こされている。監査委員の公選制を導入するべきなど考えあるが、どう思うか?
(宇賀氏)住民監査請求に対して、不当性を監査しているところもあるが、十分でないから、住民訴訟へ。長から、任命されていることに問題ある。外部監査も委託契約であるから、独立性を確保できない。自治体の外での監査でないとだめ。
(金井氏)そもそも、監査結果に法的拘束力や強制力がないので、まじめに監査する法制度ではない。
◎大型公共施設建設などに伴う住民投票条例について、結果によっては、長や議会の決定が否定される制度だが?
(花田氏)何かあったら、住民投票をすればいい、と言うのはいかがなものか。青森市では、1回住民投票をすれば、約1億円のコストがかかる。
(青山氏)政策議論をすれば良いだけ。画一的にやることはない。名古屋は政策議論の対立、長と議会が対立すれば、住民に聞いてみよう、という住民投票はあってしかり。ただし、論点を整理し、討論会や説明を果たす必要がある。
◎最近では、自治基本条例の中で、常設型の住民投票もあるが、その際の発議権者はだれにするべきか?長でも良いか?
(宇賀氏)間接民主主義の限界ある。選挙の争点でなかったものが課題になることもあるため、特定課題については、住民投票ということもあり。発議権者については、住民の一定割合が必要。長は条例権あるので、発議権者になる必要ない。議会は、少数で議案提案権がない場合もあるが、基本は市民だと思う。
13日(2日目)
1.課題討議
2日目は、「議会基本条例について」をテーマに、議会基本条例を制定した議会から、報告・討議がされました。
★コーディネーター 牛山久仁彦氏[明治大学政治経済学部教授]
●報告者 佐々木勇一氏[帯広市議会副議長]
●報告者 玉川喜一郎氏[越前市議会議員]
●報告者 安本美栄子氏[伊賀市議会議長]
●報告者 池田惠一氏[京丹後市議会議長]
各議会での、議会基本条例制定の背景や経過、制定後の議員や議会の変化などについて、報告がされました。内容は割愛しますが、どこの議会でも、制定に向けた議論に相当の時間をかけており、各議員の思いや考え方をまとめるのに苦労したことがわかります。主な、議論項目は、議案質疑における一問一答方式、委員(議員)間討論、本会議や委員会の公開、市民への議会報告会、行政側の反問権、議決事件の範囲などでした。また、制定後に変わった点としては、市民への説明会実施により、しっかりと説明責任を果たすため、議員個々の資質向上が図られた。議決事件の拡大により、総合計画の基本計画について、119項目の修正を行った。目に見える議会となった。などの報告がされました。
2.視察
課題討議終了後、いくつかのコースに分かれて、視察を行いました。私は、原子燃料サイクル施設のある「六ヶ所原燃PRセンター」と1,500kwの発電力のある風力発電機21基を設置している「むつ小川原ウィンドファーム」を視察しました。福島原発のメルトダウンの状況が、実際にどういうものなのか、燃料棒の実物などを見ながら、説明を受けました。風力発電については、1基で約800世帯の電力が賄えるとのことでした。21基の風力発電機はデンマーク製で、その管理・保守を行っていて、ここの場所以外の風力発電機もオンラインで情報管理をしているとのことでした。コスト的には、1基あたり設置に約3億円かかっており、17年は稼働しないと元が取れないとのことでした。
※研究フォーラムに参加して
今回の、フォーラムに参加して、感じたことや思ったことは、
・災害時を含めた非常時における、議員や議会の役割について、しっかりと議論する必要があると思いました。。
・議会基本条例については、現在、藤沢市議会でも検討を行っていますが、議員の知識を含めた資質の向上、市民から見える議会にするためにも、議会報告会、反問権付与、答弁調整の見直しなどが、必要と思います。
・住民投票については、議員が、市民の代表となり得ていないから生じるものと思います。しっかりと市民の要望を把握して、市民の代表となることが出来れば、議会での決定が市民の決定となるのではと思います。
・目に見える議会という観点からも、議会の中で、会派の中で、どのような議論がされ、物事が決まったのか、分かりやすく報告することが必要と思いました。引き続き、ホームページでの速やかな報告に努めようと思いました。
・フォーラムの1日目、昼食をとっていたら、同じお店に入ってきた参加者(議員バッチあり)が、昼食と同時にビールを飲んでいました。また、2日目の昼食会場(参加者全員)でも1割ぐらいの人がビールを注文していました。私には、この感覚がまったくわかりません。これから講演を受けたり、視察に向かう時に(仕事中に)ビールを飲むことが、その人たちにとっては、当たり前かも知れませんが、絶対にしてはいけないと思うのと同時に、そういう感覚では、今回のテーマにもあった議会改革などは絶対に出来ないと思いました。
以上、報告とします。