9月5日 11:40より、議員全員協議会が開催され、この間、臭気問題、事業収支の悪化など、大きな課題のあった、「藤沢市有機質資源再生センター」の運営について、中止に至る経過と今後の対応など、市側から説明がされました。内容(抜粋)は次の通りです。
1.経過
平成16年の法改正により、家畜排せつ物の野積みが禁止され、また、同年の県条例の改正により、剪定枝の野焼き処分も禁止されたため、こうした廃棄物の適正処理の対策が急務となった。市では、資源循環型社会の構築を目的に「藤沢市有機質資源再生センター」の事業化に取り組んだ。
しかし、事業がスタートして以来、臭気問題が解決できず、未だに目処が立っていない。また、事業収支も一向に改善の兆しが見えない状況となっている。
更に、この度、法で定められた基準を大幅に超えた臭気指数が測定され、神奈川県から、有機質資源再生センターを運営する「湘南エコファクトリーPFI株式会社」(以下:SPC)に改善勧告書が交付され、廃棄物の受入れ停止措置を命じられた。また、県から藤沢市に対して、適切な事業運営に向け、SPCを指導するよう依頼文書が送付された。
現在、応急的な措置により、市内畜産業の崩壊につながるような事態は回避できたものの、本事業の抜本的な見直しは避けられない状況にある。
市としては、これまでの事業内容と臭気対策等の検証、コスト分析、周辺住民との協議結果を総合的に判断し、畜産振興への影響を最小限度に止めることを前提に、本事業の中止に向けた取り組みを開始することとした。
2.当面の対応状況
(1)家畜排せつ物
当センターに搬入している家畜農家は11戸で合計約18トン(1日当たり)。この11戸の内、5戸は8/14より、北部環境事業所に搬入して焼却処分を行っている。それ以外の6戸は、暫定的に自前の耕作地に肥料として散布したり、同業者施設に搬入して対応している。
(2)食品残さ
8/8から、北部環境事業所に搬入して、焼却処分を行っている。
(3)剪定枝
一部、環境事業所にて焼却処分を行ったが、抜本的な対応方針が定まるまで、事業者にて保管措置を行っている。
3.事業の今後のあり方について
(1)国・県との調整状況
この事業は、国・県から約6億2,000万円の補助金を受けているので、協議が必要であり、8月28日から、国・県・市の三者による協議を開始している。
(2)中止までの措置
戸別畜産農家の経営継続に向けた課題が、一定程度解決するまでの間は、暫定的に施設の運営は継続せざるを得ないと考えている。その期間は、平成26年度までの概ね2年間程度を想定している。その間の廃棄物処理については次の通り。
①家畜排せつ物→これまで同様にセンターにて堆肥化する。
②食品残さ→臭気の発生に影響を与えるため、搬入を停止する予定。なお、食品残さについては、市内分は一般廃棄物として環境事業所で焼却処分を行い、市外分については、搬入事業者に状況を説明し、新たな処分の方法について検討を依頼している。
③剪定枝→公共排出分については、これまで同様にセンターで堆肥化。民間排出分については、市外のリサイクル施設に持ち込みを予定。
4.今後の課題
(1)畜産農家への対応
事業中止による畜産振興への影響を最小限に止めるには、センターに搬入している畜産農家の家畜排せつ物処理の自立化が必要。このため、畜産農家へのヒアリングをしており、今年度中を目標に個々の自立モデルを策定し、来年度早期に具体的な取り組みを進めたいと考えている。
(2)特定事業契約の解除に向けたSPCとの交渉
SPCとの特定事業契約の解除に向けた交渉は、最も困難な課題。建物を所有するSPCとの譲渡交渉等、法に基づく客観的な判断による解決をめざすためにも、専門的な知識を有する弁護士による対応が必要と考えている。
(3)臭気対策
食品残さを搬入停止にし、臭気指数を定期的に複数個所で測定、臭気の質の変化を検証していく。更に、臭気指数だけでは測ることのできない悪臭の存在も、地元説明会において指摘されているので、効果的な臭気対策の追加を必要に応じて検討していく。
(4)地元対応
①畜産農家の自立までの間の事業継続については、地元自治会等関係者の一定の理解を得ているが、定期的に機会を設けて、説明責任を果たすことにより、信頼関係の構築に努めていく。
②事業開始当時、地元から要望のあった、地域のまちづくり課題については、事業中止に関わらず、引き続き関係部門と調整を進め、対応を図る。
③事業中止後の跡地利用については、関係者と緊密に連携して、対応していく。
5.中止に向けた財政負担(現時点での概算費用)
(1)早急な対応が必要な費用(1,100万円)
①臭気指数の定点観測費用 1,000万円
②顧問弁護士への代理人依頼費用 100万円
(2)事業撤退に向けた負担(12億3,000万円)
①土地原状回復費用 4億円
②土地賃借料 1億4,200万円
③国県補助金返還金 3億2,000万円
④畜産農家処理施設補助 3億3,000万円
⑤臭気状況定点観測費用 3,800万円
(3)別途負担が必要となることが想定されるもの
①SPCとの特定事業契約の解除に伴う費用
②施設稼働中の臭気対策費用(悪臭の訴えが多数寄せられた場合)
※参考 事業を継続した場合の財政負担(特定事業契約による平成33年度まで事業を継続した場合)
①土地原状回復費用 4億円
②土地賃借料 1億4,200万円
③国県補助金返還金 1億5,000万円
④畜産農家処理施設補助 3億3,000万円
⑤臭気状況定点観測費用 1億6,000万円
⑥脱臭対策費用 9億2,000万円
合計 21億200万円
「質疑」
加藤(なを子)議員
悪臭の原因は?→建物の北側を閉塞したため、未発酵2,000トンの臭気濃度が上がり、南側の排気で臭気が高くなった。
堆肥の質は?→販路はJA含めてある。水分が多いため、一般には受け入れられにくい。
食品残さを受け入れない根拠は?→残さにより、腐敗臭がでるため。
追加的な脱臭対策とは?→臭気関係業者と具体的な対策について協議しているところ。
友田議員
責任の所在と総括は?→センターをつくって以降、近隣住民の快適な住環境を奪ってしまって申し訳ない。一刻も早く住環境を取り戻すこと。畜産業への影響を最小限にとどめることで市の責任を果たすと考えている。
建物の無償譲渡についてSPCと交渉できないのか?→SPCとは平成33年7月31日までの契約なので、途中解除となる。特定事業契約の中で、SPCが原因なら無償譲渡を協議できる。
SPC側に問題ある場合は協議できると言うが、今回の臭気問題はSPC側が原因ではないか。無償譲渡を協議するべきでは?→SPCが臭気を出したものだが、契約を解除することとは別。市側が中止を決定したので、弁護士と相談する中で、進めていく。
塚本議員
PFIの失敗は全国で4事業。今回の事で、PFIそのものが良くないものと受け止められてしまうのでは。手法を選定した考えは?→全て公で担うのは困難。民間活力の活用は今も変わらない。当時、PFIを新たな事業手法として選択した。間違っていなかったと考えている。今後も同様な考えで行っていく。
事業の中止は、PFIが原因ではなく、事業そのものが成立しないという事。仮に、市が主体で行った場合でも中止になったのか?→事業採算の見通しが甘かった。臭気の問題は、一定の基準を守っていても、住民には耐えられないものだった。PFIでも直営でも、おそらく密閉式では同じ結果になったと思う。今後は、PFIも直営も、充分導入にあたっての精査・検討をした上で、導入しないと同じ過ちをしてしまう。
原議員
県からの勧告の2番目にある、許可を受けた内容と違うものについて、誰が判断したのか?→ファンとシートカーテン。高温多湿なので、稼働して1年でファンは故障。経営的な判断で、お金がなく、そのままになった。
畜産農家への支援について、どのように考えているのか?→11農家と戸別にヒアリングしており、具体的な方策を検討している。
2年後以降の、食品残さと剪定枝はどうするのか?→一般廃棄物なので、市で処理する責任がある。持ち込まれれば、焼却処分する。
更地にして以降、市がどこまで面倒見るのか?→海老名市や宮原でも色々意見あるが、まずは、畜産農家の対策を最優先に揺っていきたい。
今回の事業の失敗について、どうしてこうなったのか?総括をして、とりまとめて議会に報告してほしいが?→時期は別として、取りまとめて、議会に報告し、総括していきたい。
市川議員
食品残さの搬入業者への対応は?→市側からお願いした経過はあるが、SPCと契約を結んでいる。3か月間の中で、新たな搬入先を決めてほしい。
佐賀議員
国・県も当時、藤沢市で施設をつくってもらいたいという事だったと思う。国に対する姿勢は?→8/28から、国が協議のテーブルにのって、市の意向を聞いてもらっている。国が意識しているのは、市が畜産業への影響をどう考えているかということ。しっかりと市の考えを示していきたい。
柳田議員
平成18年度から24年度まで、いくらコストがかかったのか?→建設費時に7億5,000万円。運営費には一般財源はなし。脱臭対策で2,000万円程度。
原田議員
食品残さの受入れ停止に伴い、SPCの運営に影響が出て、SPCが撤退したら直営でやるのか?→操業の空白ができると、畜ふんの行き先がなくなるので、SPCで続けていきたい。
国・県への返還金の根拠は?→耐用年数の日割りであり、確定額ではない。
耕種農家が堆肥を使えるのか。市内農家の意向を聞くのか?→JA等と協議している。畜産農家自ら営業できない。JAの協力で生産農家での堆肥の地産地消できるようにお願いしていく。
以上、報告とします。