2月17日の本会議(初日)の中で、鈴木市長より、施政方針と財政計画が示されました。内容の抜粋については、次の通りです。
1.はじめに
私(鈴木市長)が、歴史と伝統のある藤沢市のかじ取りを担い、早くも2年が経過し、折り返しの3年目を迎えようとしている。市長就任以来、市民に開かれた信頼される市政を構築するため、「郷土愛あふれる藤沢」を普遍的な理念とし、市民の声を第一に考え、多くの難題を先送りにせず、精力的にその解決を図ってきた。
市全体の元気をけん引する役割を担っている藤沢駅周辺地区の再整備については、本市が持つ特性を生かし、次の時代に対応するまちとして、湘南の玄関口である藤沢の存在感を向上させる取り組みに着手した。
また、市役所本庁舎については、「人・環境にやさしい市民に親しまれる庁舎」をめざし、平成26年度は、市庁舎の実施設計や既存庁舎の解体工事、仮設歩道橋の設計に着手するとともに、財政状況を考慮し、継続的に庁舎整備基金の積立を行っていく。
さらに、これまでの総合計画の仕組み自体を転換し、市民ニーズに基づいた課題に柔軟に対応、継続できる仕組みとして、「藤沢市市政運営の総合指針2016」の策定に取り組み、本市の新たな政策体系として、4月からスタートさせていく。
私は、この2年間、市政への信頼回復や、将来への藤沢の基盤づくりなどを着実に進めることができたと考えているが、「安全・安心」「産業・経済」「歴史・文化」「子ども・子育て」「健康・生きがい」などの分野において、次世代に先送りしてはならない課題も顕著化している。
こうした課題を解決するため、「郷土愛」「人の和」「元気」を市政の中心に置き、地域における様々な活動主体とのマルチパートナーシップや、庁内の複数の部が1つの課題に取り組む横断的な連携、複数の課題を総合的に捉え、1つの施策を実施するなど、施策効果を高め、郷土愛あふれる藤沢づくりを推進していく。
2020年に、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定した。江の島でヨット競技が開催された50年前の東京オリンピック当時、私は中学生で聖火リレーに参加するなか、オリンピックの開催による市民の高揚感に胸を躍らせていた。
本市として、この機をチャンスと捉え、市民とともにスポーツだけでなく、産業、観光、国際交流に加え、健康づくりやバリアフリーのまちづくり、人権、平和、教育など、オリンピックを意識した取り組みを、藤沢ならではの「おもてなしの心」を持って、積極的に推進していく。
本市は、人口減少時代にあっても、なお人口増加を続け、42万人の市民が暮らす湘南の中心的な都市として発展を続けている。私は、こうしたことを礎に、「自治体の政策は、日々の市民生活や地域への愛着の中から創造される」という信念のもと、少子・超高齢社会にしっかりと対応し、市民が、この藤沢市で学び、働き、いつまでも健康で元気に暮らし続けることができるよう、平成26年度における「郷土愛あふれる藤沢づくり」のテーマを「魅力」「活力」「創造力」として、市政を進めていく。
2.「魅力」「活力」「創造力」が「あふれる」
藤沢市は、居住、産業・観光、自然、交通、教育など、バランスのとれた都市としての性格を有し、多くの「魅力」と「活力」を備えている。南部には、浮世絵にも描かれた江の島、遊行寺の門前町、東海道の藤沢宿など、人を惹きつけ賑わいを創出してきた「魅力」がある。また、年間1,500万人を超える観光客が訪れるなど、全国的にも「魅力」ある観光ブランドとして、確固たる地位を築いている。北部には、水と緑があふれる豊かな自然がある上、未来に向けた、交通ネットワークの充実や、環境共生型の新たなまちづくりが進むなど、本市の一層の発展につながるポテンシャルを有しており、本市の「魅力」がさらに「あふれる」ように取り組んでいく。
また、湘南C-Xの新たなまちづくりによる商業施設の立地や、「ふじさわ元気バザール」などの産業振興をはじめとする地域経済の「活力」を高める取り組みを進めている。また、各地区では、市民団体、NPOなどの活動が積極的に行われており、まちの「活力」となっている。本市の「活力」がさらに「あふれる」ように取り組んでいく。
各地域には、地域の人々の「創造力」がある。職員には、市民の声を聴きながら課題を発見し、前例や固定観念に捉われずに取り組みをしていく意識改革や「創造力」が求められている。市民や職員の「創造力」が「あふれる」よう取り組んでいく。
3.社会経済情勢
アベノミクスが2年目を迎え、金融政策については、日本銀行による2%の物価目標の導入、財政政策では、大規模な補正予算による緊急経済対策、成長戦略では、産業競争力強化法や国家戦略特別区域法の制定など、いわゆる切れ目のない経済政策が実施されている。
景気は緩やかに回復しているが、4月に予定されている消費税率の引き上げに伴う需要の冷え込みにより、成長戦略による効果が表れにくくくなることが憂慮されるとともに、TPPの締結に向けた交渉結果や、社会保障と税の一体改革などの政策が、本市や市内産業に与える悪影響も懸念される。本市としては、地域経済の状況や雇用情勢を注視するとともに、経済情勢に左右されることのない安定した市民サービスの提供に必要な財政基盤を構築し、市民生活の質的向上に取り組む必要があると考える。
また、少子・超高齢化、核家族化の進展、地域での見守りが必要な子どもや一人暮らしの高齢者の増加に加えて、住民同士の交流の希薄化などが、地域社会を大きく変える要因となっている。こうした状況に対応するためには、市と地域における活動主体が、それぞれの特性を生かして相互に連携しながら地域のコミュニティを醸成し、人の和や交流によるまちづくりを更に進めていくことが必要と考える。
4.重点的な取り組み(郷土愛あふれる藤沢づくり)
(1)みんなの命と財産を守る災害などへの備えを進めよう!
平成26年度は、地震・津波対策や風水害への対策を更に強化していく。また、市民の日常生活における火災、急病、犯罪、交通事故等に対応する、消防・救急、防犯、交通安全に積極的に取り組むとともに、市民生活の安全・安心の基盤となる公共施設、都市基盤の整備を進め、市民生活において体感、実感できる安心を創造していく。
・改定した地域防災計画に基づき、辻堂地区の堂面第2公園、藤沢地区の遊行寺坂上交番隣接地への防災機能強化を図る。
・小、中、特別支援学校に児童生徒の留置き時に活用できる飲料水の備蓄を行う。
・(仮称)藤沢市災害復興条例の制定や基金の創設について、検討を進める。
・ゲリラ豪雨や大型台風に伴う浸水対策として、柄沢特定土地区画整理事業区域内の雨水調整池の整備や、雨水幹線の整備を進めるとともに、鵠沼・善行地区の貯留管の整備に向けた実施設計を行う。
・海岸に面した3地区について、地域ごとの津波避難計画を策定する。
・湘洋中学校に外階段等を設置し、津波避難対策を進めていく。
・北消防署遠藤出張所の新設に向けた、地質・測量調査を実施する。
・六会市民センターの改築に合わせ、北消防署六会出張所と併設する第16消防分団待機宿舎の再整備を進めていく。
・防犯カメラの設置を引き続き行う。
・防犯灯について、公共施設LED化推進計画に基づき、3年間での完全LED化をめざしていく。
・藤沢駅北口、長後駅西口に自転車等駐車場を整備する。
・公共施設の再整備ブランを策定する。
・藤沢公民館と労働会館については、機能を集約した複合施設として、現労働会館敷地での再整備に向けて、基本構想を策定する。
・藤沢本町駅西側に接する市道652号線整備に向けた設計を行う。
・高倉下長後線の計画的な整備に向けた取組を進めていく。
(2)みんなとまちが元気になる魅力と活力を生み出そう!
都市としての機能とサービス水準を維持・向上させながら、今後も、都市の存在感を高め、成長・拡大を続けることをめざす。新たな都市基盤整備、地域経済の活性化、シティプロモーション、市民協働の推進などに取り組み、市民一人ひとりと都市そのものを元気にしていく。
・喫緊の課題である藤沢駅周辺地区の再整備については、先行プロジェクトとして、藤沢駅北口デッキの全面改修、エスカレーターの新設に向けた、構造調査、設計等を行う。
・市庁舎整備とあわせた、新館前の歩道の拡幅、歩道橋の架け替えに向け、実施設計を進めていく。
・いずみ野線延伸の実現に向けて、関係機関等と検討、協議を進めていく。
・健康と文化の森については、周辺の自然環境に配慮しつつ、市街化区域への編入を前提とした都市拠点形成の検討を進めていく。
・新産業の森については、地域における企業誘致の促進と既存企業の市内投資の誘発を図るため、計画的に整備を進めていく。
・2つの森をつなぐ主要道路として、(仮称)遠藤葛原線の整備を進めていく。
・地域経済の好循環を促すため、住宅リフォーム助成制度の対象件数を拡充する。
・農道や用水路などの基盤整備を進めていく。
・地産地消の推進に向けた、「湘南ふじさわ産」農水産物の生産・流通の一層の促進や、「ふじさわ元気バザール」による地元産業の活性化に取り組んでいく。
・藤沢市の都市ブランド力を高める取組として、「(仮称)ふじさわ盛り上げ隊」を設置する。
・北部地域の観光振興を図るため、都市近郊型のスポーツサイクルイベント゛「サイクルチャレンジカップ藤沢」を11月に開催する。
・日本非核宣言自治体協議会が設立30周年を迎えることから、長崎市と連携して、本市において記念大会を6月に開催する。
(3)みんなが誇りと愛着を持てる地域をつくろう!
藤沢への郷土愛を高め、歴史・文化を大切にしながら、地域活動を支える仕組みづくりに取り組むとともに、本市の貴重な財産である自然環境を維持・保全し、次世代に継承する取り組みを進め、市民が「誇り」と愛着を持てる藤沢を創出していく。
・藤沢宿の歴史と文化の魅力を向上し、将来につながる愛着と賑わいを創造するため、遊行寺橋の改修、(仮称)藤澤宿場館の新設、藤沢駅、藤沢本町駅方面からの誘導サインの設置を行う。
・東海道シンポジウム藤沢宿大会の開催支援を行う。
・「藤沢市街なみ百年条例」に基づく、街なみ継承地区指定に向けた取り組みを進めていく。
・本市が所有する浮世絵の公開の場として、(仮称)藤澤浮世絵館と、若手芸術家の活動支援などの機能を持つ、(仮称)アートスペース湘南を湘南C-X内に整備する。
・地域の絆や助け合いを高めていくための身近な「地域の縁側」としての「交流スペース」の整備を進めていく。
・三大谷戸については、自然環境の保全・再生に向けて、用地取得を引き続き進めていく。
・これまでの水田保全奨励事業を、県が認定する「エコファーマー」と連動した奨励費制度に改善し、継続的な水田保全を推進する。
・フジロードにあるフジを適正に管理し、更に魅力をPRすることで、市の花であるフジへの愛着を高めていく。
・エネルギーの地産地消のための検討会を設置し、エネルギー政策の検討に着手する。
・太陽光発電システムと家庭用燃料電池システムの両システムの同時設置に対する上乗せ補助制度を創設する。
(4)みんなの絆で藤沢っ子の明日を築こう!
市民や関係団体とと行政が連携・協力して、子ども・子育て、教育の取り組みを進め、子どもたちの健やかな成長を実感できるまちをめざしていく。
・多様な保育サービスを総合的に案内する、保育コンシェルジュを新たに配置する。
・待機児童解消については、平成27年度までに約820人の定員拡大を図るため、鵠沼、藤沢、明治、湘南台地区に認可保育所を整備するとともに、藤沢型認定保育施設の拡充を図る。
・国の「待機児童解消加速化プラン」を活用し、認可をめざす認可外保育施設に対して、認可への円滑な移行に向けて支援していく。
・しぶやがはら保育園の移転整備に着手する。
・ニート、ひきこもり等に対する、自立支援のための個別サポート事業である「ユースワークふじさわ」での若者就労支援事業を引く続き進めるとともに、就労による収入を得ることにより、生活保護からの自立を支えるため、生活保護受給者の求職活動を積極的に支援する。
・11月から、善行、湘南台中学校で、中学校給食の試行を行う。
・校務の効率化と情報セキュリティの確保を図るため、全ての中学校、特別支援学校で校務支援システムの運用を開始する。
・小学校、特別支援学校における将来的なLAN整備を見据え、小学校2校で試行を行う。
・いじめ、暴力防止対策として、電話相談の時間拡大、メール相談の改善、スクールカウンセラーの配置など、相談体制の充実を図る。
・いじめ問題対策連絡協議会及び、いじめ問題再調査委員会を新たに設置するほか、(仮称)藤沢市いじめ防止条例の制定に向けた検討を進める。
(5)みんなの希望と笑顔があふれる健やかな暮らしを支えよう!
健康寿命の延伸に向け、福祉、保健、医療、介護の充実を図るとともに、市民一人ひとりの生きがいづくりに繋がる生涯学習、生涯スポーツの推進や、暮らしやすさの向上を図る移動円滑化等に取り組み、市民の笑顔があふれ、生活の豊かさが実感できるまちをめざしていく。
・「胃がんリスク検診」を新たに実施する。
・ 生きがい福祉センターの改築を行う。
・(仮称)天神スポーツ広場の少年野球場の整備に着手する。
・葛原スポーツ広場野球場の2面化に向けた基本設計を行う。
・市民病院については、引き続き、新東館の建設を進めていく。
・日常生活に困難を有する方からの生活や就労相談、専門化、複雑化する福祉サービスに対応する福祉保健総合相談の体制の充実、強化を図る。
・辻堂の「湘南ロボケアセンター」に対して、身体機能維持のための自立動作支援装具、障がい者訓練に要する費用の一部を新たに助成する。
・辻堂地区での特別養護老人ホームの整備、鵠沼地区での介護老人保健施設の整備に対する助成を行う。
・地域での新たな公共交通として、通常の路線バスよりも定時性や速達性を高めようとするバス輸送システム、いわゆるBRTの導入検討を進める。
(6)その他の特徴的な事業
・小学校2校、中学校4校において、非構造部材耐震改修工事を行う。
・9月に滝の沢小学校、駒寄小学校に給食調理室を開設することで、全ての小学校、特別支援学校における、単独調理方式による給食の提供を実現する。
・小学校の普通教室、給食調理室への空調設備を進めていく。
・税法上の寡婦控除の適用がなく、経済的に不利益な状況にある非婚の母及び父に対する支援策として、保育料や幼稚園等就園奨励費補助金について、寡婦控除のみなし適用を開始する。
・引地川親水公園にトイレを設置する。
・2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、市民協働組織として、「(仮称)未来(あした)をつかむ東京オリンピック・パラリンピック藤沢誘致・支援委員会」を立ち上げ、全庁的な取り組みを進めていく。
5.財政計画
平成26年度当初予算は、本市始まって以来の1,300億円を超える積極的予算とした。庁舎整備に約8億円の増、市民の安全安心や利便性向上に向けた土木費の増が約37億円、また、学校施設改修や中学校給食の試行など、未来を担う子どもたちの教育に対する投資についても、約18億円の増額を行った。また、老人福祉施設建設助成で約4億円、待機児童解消に約9億円など、投資的経費も積極的に行い、前年度と比較して約55億円の増額となっている。
歳入は、市税収入を法人市民税を前年度比168%、個人市民税も103%、固定資産税も約5億6千万円増を見込み、全体では、平成25年度当初予算と比較して106%、約44億円の増とし、約788億円を計上している。
これにより、平成26年度当初予算の規模は、
・一般会計 1,312億8,700万円(前年比108.6%)
・特別会計 1,208億2,631万8千円(前年比107.6%) 計2,521億1,331万8千円(前年比108.1%)。
以上、施政方針+財政計画の報告とします。