11月29日 19:00~21:00まで、藤沢市民会館において、藤沢市医師会主催の第11回「藤沢の医療を考える集い」が開催され、出席しました。テーマは、「子供からはじめよう!認知症予防!!」~食育からはじめてフレイルを防ぐ~で、2部構成で行われました。
【第1部】 子供からシニアまで ~専門家の立場から~
(1)「胎児から受験生まで ~食べる基本が食育~」 杉本医院「杉本道代」院長
「食育」の必要性について、その歴史、社会環境の変化から「食育基本法制定」が必要になった背景、家庭での「食育」が最も重要な理由などについて、講演をうけました。
お腹に子がいる母の栄養は、生まれてきた子どもに影響があり、子供は、それを選ぶことはできない。妊娠から出産までの間、必要な栄養からして、7kg~12kg体重が増える必要があるが、スタイルを気にして必要な体重増とならないケースがある。生まれてきた子どもは、食べて生きるという本能で、肥満になる傾向がある。更に、切れやすい子どもになりやすい。との話が印象的でした。生まれる前からの食育、そして、味覚が形成される時期の食育(味付けや出汁取り)の必要性を改めて感じました。
(2)「認知症を未然に防ぐ二十歳からの食事管理」 藤沢市民病院管理栄養士「富樫政彦」氏
平均寿命と健康寿命の差を縮めることの必要性を「介護が必要になった原因」の2位である「認知症」に焦点をあて、「脳血管型認知症」「アルツハイマー病」にならないための取り組みについて講演をうけました。認知症を防ぐには、食事+運動でメタボにならないことが重要であり、食事では「和食」がおすすめとのことでした。久山町研究によると、耐糖能異常と認知症発症の関連では、異常があると相対危険度は2.5倍になるとのことでした。久山町研究結果から、認知症にならなかった高齢者の食生活は、①主食は控えめ/②野菜・海藻・大豆製品をよく食べていた/③乳製品を適度に摂っていたとのことでした。そこで、和食がおすすめとなるのですが、欠点としては塩分が多いことで、味付けの前に、かける・つける量を見直しましょうと減塩の必要性を訴えておりました。
まとめとしては、和食を中心にバラエティ豊かな食事を楽しみつつ、塩分の摂りすぎ、食べすぎに注意/ゆっくり、よく噛んで食べることを意識する/適度な運動の3点となりました。講演を聞いていて、私の食事のイメージとしては、「旅館の朝食」でした。鯵の干物や塩鮭、湯豆腐、サラダ、お浸し、ご飯にお味噌汁など。でも、自宅でそれをつくるのは難しいと思いました。しかも毎日ですから(^-^;
(3)「認知症は予防できるか?認知症のタイプと危険因子・予防因子」 鶴井医院「高岸敏晃」副院長
認知症の発症を2年遅らせると、認知症患者は20%減少、5年遅らせることができれば、40%減少する。認知症の治療法はまだ存在しないが、数年間認知症の発症を予防することで、認知症自体を大きく減らすことになる。認知症は、アルツハイマー型と血管性認知症が認知症の8割以上を占める。アルツハイマー型認知症の危険因子は、高血圧・糖尿病・高コレステロール血症・喫煙による動脈硬化、血管性認知症の危険因子は、高血圧・高コレステロール血症・糖尿病・喫煙・心房細動・大量飲酒。
着目したのは、MCI(軽度認知機能障害)で、「正常な老化」と「認知症」間に位置する状態にあることを差し、放っておくと43%が認知症になり、その後に取り組みをしても、認知機能の低下を緩やかにできる程度。しかし、MCIの段階で予防を集中的に行うことで、認知機能の改善、認知症発症率の低下が期待されるとのことでした。
まとめとしては、血管性リスクを下げるためには、かかりつけ医を持ち、生活習慣病の管理をしっかりすることと禁煙すること/運動は、認知症そのものにも直接的な予防効果がある/認知機能トレーニング、社交活動を行うことで、さらに予防効果が上がる。とのことでした。
【第2部】 特別講演 「なぜ老いる?ならば上手に老いるには ~「フレイル」って一体なんだろう?~」 東京大学「飯島勝矢」教授
日本の高齢者における、栄養状態はどうなっているのか。。日本人65歳~79歳の11年間の追跡によると、総死亡に対する危険度は、BMI22~23を基準にすると、一般的にBMIが高い方が悪いとされているが、低いほど総死亡率が高くなっている。そこで、これまでの健康管理や意識を改めて考え直す必要がある。例えば、食事制限をして体重を減らしたうえで、食事を戻しても若者はすぐに元の体重に戻るけれど、高齢者の体重は戻らない、これは、筋肉量が落ちているから。新潟県中越地震の避難所において、高齢者の3割は歩行困難になり、そのうち4割が6か月後でも回復しなかった。これは、歩くことをさせなかった結果である。
サルコペニア(筋肉減少症)の指標として、「指輪っか」テストが紹介されました。自分の両手の親指と人差し指で輪っかをつくり、自分のふくらはぎに回します。囲めない、ちょうど囲める、隙間ができる、その順にサルコペニアの危険性が高まるとのことでした。そこで、「フレイル」(健康と要介護の間)に陥らないためには、栄養「食(口腔機能の維持含む)」+運動「身体活動・運動など」+社会参加「趣味・ボランティア・就労など」の三位一体の取り組みが重要であり、その気づきのサポート活動を市民レベルで広げているとのことでした。この「フレイル」の取り組みをすることで、何もしなければ、要介護に至る高齢者を健康側に引き寄せることができるとのことで、大変重要な取組みだと感じましたし、今後の藤沢市の健康増進の取り組みにも取り入れる必要があると思いました。
以上、報告とします。写真は、主催者あいさつをする、鈴木藤沢市医師会会長・鈴木藤沢市長、特別講演をする飯島教授。