11月7日 建設経済常任委員会にて呉市の視察を行いました。概要は次の通りです。
【テーマ 1 】 酒米増産支援事業
この事業は、呉市内で生産する酒米を増産したことで、農家の所得向上、耕作放棄地の減少につながったとのことで、藤沢市内における耕作放棄地対策、農家の担い手不足に参考になるのではないかと選択しました。
1. 事業開始の背景
(1)主食用米価格が下落し、生産コストがそれを上回り赤字化
(2)米以外の作物を栽培するには、栽培技術の習得や労働時間が増加し困難
(3)農業従事者の高齢化
(4)遊休農地化の増加による周辺農家への被害・影響
★そこで、平成21年7月に遊休農地を活用した農業振興策を検討し、「オール呉産の日本酒の製造による地域の活性化」をめざすこととした。
2. 取組の課題
(1)呉市は標高が低いため、酒米の生産適地ではない。ただし、一部生産適地と思われる海抜200m以上の地域あり。
(2)酒米種籾の確保
(3)酒米品種の指定(酒蔵が八反錦を指定)
(4)酒米を栽培したことがない
(5)日本酒を製造しても廃棄となるリスクがある
★海抜200m以上の地域で、農業ジーンバンク(県の外郭団体)からの種の提供で克服
3. 取組の効果
(1)酒米の買取価格は、主食用米より約1.5倍の価格
(2)農家の所得向上
(3)オール呉産の日本酒製造・販売による地産地消の推進が図られ、地域の活性化に寄与
★平成23年度に呉市の助成制度を活用して、オール呉産の日本酒が誕生
4. 酒米増産事業の取組
平成23年度から始まった酒米栽培は、平成27年度まで、63a(3トン=2,400本)の生産面積を維持してきた。日本酒の評価も高く、消費者や飲食店から増産を望む声も多く、また、酒造メーカーからも増産の要望があったが、施設が整っていないため生産面積を拡大できなかった。
★そこで、約900万円の補助により、JA呉昭和東倉庫に遠赤外線乾燥機、籾貯蔵タンク、籾選別機を整備した(維持管理はJA呉)
5. 事業の効果
(1)農家所得の向上
(2)遊休農地の解消約1.1ha
(3)オール呉産の日本酒が、日本酒品評会の純米酒部門で金賞3位
6. 所感
呉市内には、酒蔵が8-9蔵あるらしく、酒米の流通先という面で、藤沢市とは異なる環境でありました。また、酒米の生産には、適した土地というのもあり、呉市の取組を藤沢市に単純に当てはめるわけにはいかないと考えます。しかし、酒米の種類によっては適地の条件も変わるかも知れません。近隣市(茅ヶ崎市や海老名市)には酒蔵もあり、生産条件、流通条件などが整えば、農家の所得向上=新規参入にもつながる可能性はあると思います。呉市の取組を参考にして、市内での可能性を研究してみたいと思いました。
【テーマ 2 】 呉市シティプロモーションの取組み
呉市のイメージキャラクターは、ゆるキャラと違ってすごく特徴的。そのキャラクターを活用したシティプロモーションについて、藤沢市の参考になればと選択しました。
1. 呉市シティプロモーションの目的
(1)観光誘客や移住・定住促進が図られるよう、呉市の魅力・呉らしさを戦略的、効果的に情報発信する
(2)呉市のブランド力の強化・都市イメージの向上を図り、呉に「訪れてみたい」「住んでみたい」と感じてもらう
★そこで、PR動画とイメージキャラクターの製作を検討
2. 課題意識
(1)呉市といえば「大和ミュージアム」
2005年の開館以来、大和ミュージアムには、10年で1,000万人を超える来場。今年6月で1,200万人の来場者となった。
(2)観光客は大和ミュージアムに来ても、その他の場所に寄らないで帰ってしまう
呉市≒大和ミュージアムだけのまち だと思われていないか?
3. 新しい呉市の魅力を伝えたい
2003-2005年の合併による「瀬戸内らしさ」 江戸の街並みが残る/瀬戸内の多島美/瀬戸内の魚介類/瀬戸内の柑橘類などを伝えたい。
まずは、新しい「呉」を知ってもらう、覚えてもらうことが重要。それが自動的に広がって「話題化」していかなければならない。
★首都圏在住の30~50代が興味を抱く、動画とキャラクターで全国的な話題化を狙う!
4. 何をプロモーションするか
造船の町、海がきれいな町、美味しい食べ物。これらの町は他にもたくさんある。
面白い動画、可愛いキャラクター。面白いけど、可愛いけど、どこの市町村のものか覚えていない。
★「呉」そのものが呉市唯一の財産。コンセプトは、「呉だと、分かる。呉ば(来れば)、分かる」
5. 顔が市名の呉市新キャラクター
★顔が市名であるため、インスタグラム、ツイッターなどSNSにアップされるたびに「呉」の存在をアピールすることができる。
6. テーマソングとプロモーションビデオ
★まさかの新テーマソング 「呉-市- GONNA 呉-市-」
1995年にリリースされ158万枚を売り上げたTRFのヒット曲「CRAZY GONNA CRAZY」の替え歌にした。
5分15秒のミュージックビデオのようなプロモーションビデオで、これまでの魅力(市中心部)と新しい魅力(瀬戸内らしさ)をプロモーション。約60万回、再生されている。
7. 発表後の取組み
(1)2017年2月1日発表会 同時に、動画をYouTubeで公開
(2)2017年2月6日 YouTubeの動画再生回数、15万回を達成
2月2日~9日にかけて、民放キー局から取材依頼、動画の放送。現在に至るまで、ローカル局による取材依頼、各コーナーで取り上げられる。
★効果検証⇒約3億円の宣伝広告効果(3月末時点)
(3)2017年4月29日 市内イベント「呉みなと祭」で、市民向けお披露目
(4)2017年7月17日 呉氏誕生祭 ★新キャラクター呉市は、いつかの海の日に生まれたこととなっている
8. 展開について
(1)ノベルティグッズの販売
ボールペン、クリアファイルなどのグッズを制作したところ、人気になり、販売することに。更に、民間企業によるグッズ製作・販売に発展したとの事でした。
(2)イベントへの参加
6か月で120件のイベントに参加。日々の活動報告、イベント告知などでファンを拡大。
★発表当初は、突然のキャラクター発表だったため(市民が関係していない)、市民からは勝手に決めてなんなんだという否定的な意見もあったとのことですが、今では、「呉氏」が参加するイベント告知を見て、市民が「呉氏」に会いにやってくるほど人気だそうです。「呉氏」の公式ツイッターのフォロワーは約5,500人にもなっています。
9. 終わりに
呉に「訪れてみたい」「住んでみたい」と感じてもらうプロモーション活動として
1年目の活動⇒話題化/認知拡大【呉氏の誕生・テーマソングの発表】
2年目の活動⇒理解促進/来訪促進【呉市民による呉氏の拡散】
3年目の活動⇒呉市ブランド確立【市民中心の「新たな呉ブランド」】
10. 所感
今回の視察で感じたことは、あまりに早い段階でシティプロモーションの取り組みが展開されています。例えば、グッズの製作などは、市の取組から民間の取組への展開。市民イベントへの展開など、民間への展開のスピードが早かったと感じます。質疑で分かったことは、「電通」へ委託しているとのことでした。視察した委員全員が、「なるほど、そういうことか」と思いました。外部へ委託した成功例として、とても参考になるものでした。
以上、報告とします。