11月8日 建設経済常任委員会にて松山市の視察を行いました。概要は次の通りです。
【テーマ】 都市ブランド推進事業
全国の自治体がPR動画を製作・発信する中で、松山市のアニメーション動画によるシティプロモーションの取組は、特徴的であり、藤沢市の今後の国内外へのPRに向け参考とするため、松山市を選択したものです。
1. 現状分析
(1)地域ブランド調査(2011年)によると、46.9%(2人に1人)は、松山市と言われてもイメージがわかないことが判明(全国で158位)
★イメージがわかない理由は何なのか。。
(2)認知度・魅力度が低く、特に情報接触度(全国で156位)が低い
(3)若年層~40代の情報接触度が低い
2. 都市イメージの明確化
現状分析を踏まえて、みんなで松山の魅力を見つめなおすことから始めた。
(1)だんだん松山プロジェクト
だんだんとは、松山の方言で、ありがとうという意味。みんなで松山のよさを見つめ直し、磨き、そして全国に発信していく活動。それが、「だんだんプロジェクト」です。ウェブサイトも開設。
多くの人を巻き込み、プロセスそのものを「視覚化」するプロジェクトを展開。松山の真の魅力は何か?徹底的に掘り下げる。
(2)松山の基本価値の設定
①【都市ブランド検討会議】⇒「松山らしいあったかい暮らし」
②【市民ワークショップ】⇒「調和のとれた暮らしやすさ」
③【松山ゆかりの人による首都圏ふるさとミーティング】⇒「『全部乗せ』最高ではないが、すべてがそろっている」
④【市民意見の募集(ウェブ)】⇒「松山の都市としての魅力、ゆっくりとした暮らしと人のあたたかさ」
★市民の皆さんの意見をもとに「人と暮らしやすさ」を基本価値として、コンセプトやブランドメッセージを設定した。
(3)松山の魅力を表すブランドメッセージを開発
★ブランドコンセプト⇒「ちょうどいい感じのあたたかい人々と、ちょうどいい頃合いの好きな暮らしが自然と創れ、自分らしく生きられる都市」
★★ブランドメッセージ⇒『いい、加減。まつやま』
(4)ロゴマークの投票
ロゴマークの投票をきっかけに、市民への浸透を図る。タウン誌の活用、市民参加による投票日までのカウントダウンなど、投票を呼び掛けた。
★55,236票もの投票の結果、ロゴマークが決定! A案13,605票/B案24,425票/C案17,206票で、B案に決定。
3. 都市ブランド推進事業の展開
★メッセージが決定。。さて、どうするか?
(1)認知度の低い若い世代に響く伝え方
(2)先行の他都市のPR戦略との差別化
(3)日本のみならず、世界に向けて発信(台北との交流あり)
★その手法は、『いい、加減。松山』を舞台に繰り広げられる冒険活劇アニメーションの製作
(1)普通のアニメでは広がらない
(2)市民に愛着を持ってもらうための仕掛けが必要
(3)アニメーション制作に向けてのポイントは
★『広がりを創るためのメジャー感』+『市民参加のプロジェクト展開』
(1)メジャー感のあるアーティスト、キャストを起用
① タレントの「友近さん(松山出身)」が本人役でアニメ初登場!
② 声優の「水樹奈々さん(愛媛県出身)」が女子校生役で出演!
③ エンディングテーマ曲は、「スキマスイッチ」とタイアップ!
④ アニメーション制作は、「ALWAWS(三丁目の夕日)」「海猿」などを担当した、「ROBOT」が担当!
⑤ スタジオジブリ「風立ちぬ」など、話題作を手掛ける背景画家の参加!
(2)製作には市民も参加
① 市民140人の歌声でサウンドロゴ製作
② 市民3名が本人役でキャラクターとなって登場
(3)完成したアニメーション
★完成したアニメーションは『マッツとヤンマとモブリさん~七つの秘宝と空飛ぶお城~』
4. 完成したアニメの戦略的発信
(1)アニメの公開、メディアPRイベントの開催
(2)参加タレントからSNSなどでの広がり
(3)東京の地下鉄のメトロビジョンで、15秒CMの配信
(4)YouTube動画広告
(5)6言語(英語・中国語・韓国語・台湾語・ドイツ語・フランス語)の字幕表示で世界にも発信
★7月~9月の3か月間、全日空(ANA)国際線全便で機内放映された
5. アニメの効果
(1)Yahoo!映像トピックスで公開初日1位を獲得
(2)アニメの総再生回数は、続編を合わせて24万回
(3)メディア露出件数は154件
★宣伝効果額は、1億4,594万円
6. アニメへの評価
★ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2014「第3回 観光映像大賞 特別賞受賞」
7. その他の取組
(1)フリーペーパー『暖暖松山』を2012年1月から発行
コンセプトは、「ずっと手元に置いておきたいフリーペーパー」で、首都圏・関西圏をターゲットに8万部を発行。経費は1号あたり500万円。
その他、フィルムコミッション、メディアプロモーション、松山応援大使などの取組の説明も受けました。
8. 移住定住促進促進事業
★都市イメージの向上から、移住候補地として選ばれる松山へ
(1)移住相談専門窓口の設置・移住コンシェルジュの設置(市職員)
(2)移住フェアへの出展
(3)移住定住に向けのウェブサイト・プロモーション動画の製作公開
(4)婚活ツアーなどの現地体感ツアー
★今後の展望としては、認知度向上⇒体験・体感⇒移住・定住へ ※移住相談は200件から500件に増加している
9. 所感
シティプロモーションの目的を明確にするための、事前の取組から実施事業までの進め方がすごく上手くできていると感じました。現状を分析、松山のイメージを市民ぐるみで創り出し、松山の価値を発信する手段として、市民を巻き込みながら製作したアニメーションで発信する。そして、移住・定住に繋げていく一連の進め方は大変参考になりました。
やはり人口減少、財政力の状況など、各自治体が置かれている状況が違うので、その取組や目的・目標も違うのは当然です。松山市の場合は、最終的には移住・定住が目標になっていますが、藤沢市の場合はどうか。人口がまだ増加している状況で、将来を見据えた移住・定住という考えにはなかなかならないと思います。しかし、切羽詰まった時に考えるのでは遅いので、藤沢市より厳しい状況の自治体の取組を把握しておくことは重要だと考えます。そういう意味でも、今回の視察は意義があったと思います。
以上、報告とします。