11月1日 14:10より、小田原市尊徳記念館において、湘南地方市議会議長会の研修会が開催され、出席しました。内容の抜粋は次の通りです。
【講演テーマ】 震災復興は義理と人情
【講師】 福島県相馬市「立谷 秀清」市長
1. 東日本大震災の発生時(平成23年3月11日)
14:46地震発生、震度6弱で、14:49大津波警報発令。14:55に第1回災害対策本部会議を開催。1番頼りになるのは、1軒1軒把握している消防団。市長の指示は、海岸部の消防団には、住民を高台へ誘導、内陸部の消防団には、建物倒壊のチェックと生存者の救出だった。そして、人口37,000人のうち、5,400人が津波被災人口だったが、消防団の避難誘により死者は458人にとどまった。
2. 避難所の開設(17:00)
公共施設・小中学校における収容可能人数は4,100人に対して、19:30時点で、避難者は2,460人、孤立者が115人以上だった。その後も避難者は増え続け、翌日には4,544人になった。この中には、災害弱者もいて、この中から死者を出さないことが重要であった。
3. 第4回災害対策本部会議 3/12 午前3時
A3用紙の表で情報共有。直後の対応と復興への準備について、目的-目標-手段-担当というように一覧表にまとめた。そして、市長からの指示は、①孤立者救出に全力をあげること/②避難者の食事、生活物資、健康対策/③住民基本台帳を基に生存者、行方不明者を確定させろ/④仮設住宅建設のための土地をまとめろ/⑤空きアパートを確保せよ/⑥生活資金を見舞金で/⑦ライフラインの復旧/⑧ガレキ撤去の置き場確保/棺桶500個を手配せよであった。
4. 一夜明けて 3/12
自衛隊、消防隊による救出が行われた。
5. 救援物資
(1)市民に呼び掛けたところ、必要な毛布、布団など、必要な物資が大量に寄せられた
(2)友好自治体から救援物資が届き、被災後1週間は、彼らの友情で生き延びた
(3)市役所に感謝の気持ちとして、各自治体や企業等に対して、お礼の貼り紙や市長からお礼状を送った
(4)救援物資をデータ化し、状況の把握、今後の支援先のデータとした
6. 被災者に対する対応
被災者(住宅が全半壊・流出・床上浸水)に対して、住民基本台帳と突合しながら、市独自の支援金として1人3万円を支給した。
7. 東京電力福島第一原発水素爆発
原発の風評被害により、相馬に物が来なくなった。医薬品はトラックを借り上げ、東京に取りに行った。また、燃料はタンクローリーを2台確保し新潟へ。
8. 医療支援
避難所での診察、健康相談は、DMATチーム、全日本病院協会チーム、JMAT石川県医師会チーム、JMAT静岡県医師会チームが参画し、医療救護班連絡会議を開催して情報共有、必要とする医療支援体制を確立した。
9. 心のケア
福島県立医大精神科丹羽教授・ボランティア精神科ドクター(延べ約1,000人)・災害対策本部保健センターとの心のケアチームで対応した。
10. 経済自殺対策
弁護士・司法書士・行政書士・土地家屋調査士・税理士の協力によるワンストップサービスの相談体制により、4,465件の相談実績がある。1人の自殺者も出していない。市長が要請すれば、日本弁護士会が無料で対応できるシステムが出来上がっている。
11. 相馬市災害ボランティアセンター
ボランティアは、登録・保険加入して、チーム編成。宿泊スペースも確保して対応した。
12. 避難所の環境改善
避難所の生活空間について、市内の吉野石膏から石膏ボードを寄贈され、それを活用して仕切って「仮住所」を設定。
12. 避難所での栄養管理
朝食・夕食は学校給食調理室で調理して配給(昼食は仕出し弁当)。調理員は、避難所の被災者の中から35人を市が雇用した。
13. 仮設住宅へ入居開始(4月30日~)
1世帯10万円の支度金/鍋釜セット・こたつ(難民を助ける会からの支援1,500セット)/1人へ寝具セット(3,000組のうち2,200組は支援物資)/1人へ米30kgを支給。
14. 仮設住宅マネジメント
4,000人の被災者に対して300棟1,500世帯の仮設住宅。1棟5戸から戸長を選出、15戸長から組長を選出し組長会議で協議する。組長の代表(会長)が市と話し合うという、組織を作っている。
15. 孤独者対策
孤独者対策として、仮設住宅には給食を集会所に配給して孤独死を防ぐが、年3億2,000万円のコストがかかる。
16. 仮設住宅での障がい者・買い物弱者支援
リヤカー販売員が各世帯を訪問。(被災者を臨時雇用)
17. 相馬市震災孤児等支援金支給条例
死者458人のうち、消防団員が10人いた。その消防団員の子ども10人に対して支援をすると決めたが、団員以外の子どもも合わせると51人となった。その51人に対して月々3万円を支給することとし、更に、進学に関する費用を合わせると、平均で1人1,000万円かかり、51人で5億1,000万円となる。日本全国、世界から寄付が寄せられ、2年で達成できたとのこと。
寄付金を受入れる口座を閉めたが、その後も寄付があり、教育復興子育て基金に積み立て、様々な支援に活用しているとのこと。その他、民間からの施設整備寄付などが行われたとのこと。
18. 孤独死対策の災害公営住宅
99人の孤独世帯に対して、相馬井戸端長屋として整備した公営住宅では、食堂エリアでNPOが食事を提供。寮生活を行うことで、孤独死を防いでいるとのことでした。
19. その他
その他、放射線に対する対応、新たなまちづくりの説明、他地域で起きた災害への恩返しとしての対応などにいて説明を受けました。
20. 災害図上訓練
今回の震災への初期対応について、あまり混乱なく対応できたことについて、日頃の図上訓練があったからとの説明を受けました。藤沢市でも図上訓練はしていますが、内容が違いました。
相馬市では、コンピューターがランダムに被災状況を提示して、それに対してどう対応するかを訓練しています。実際に、災害が起こった場所に対応するために、地域の業者に対応できるか?問い合わせ、例えば重機が足りないとなれば、重機をどう調達するか、また別のところに連絡するなど、実戦形式で行っているとのことでした。
21. 所感
今回、立谷市長から、自身が実践した震災対応~復興までの話を聞きました。実体験の話だったので、とてもイメージがわきましたし、藤沢市で実践していくために、どのよう気構えや準備が必要か、理解ができました。
しかし、一番大事なことは、有事が起きた時に、的確な判断と、適切な指示がいかに出せるかどうかに尽きると思いました。そして、市の機関以外の外部機関に指示や要請をした時に、迅速に対応してもらえるための信頼関係を構築しておく必要が重要だと感じました。相馬市で実践している図上訓練が藤沢市でできるか現在では難しいと思いますが、今日の研修会の内容を共有することで、実現も可能ではと思いました。今日はとても良い話を聞けたと思います。