2019.11.8 建設経済常任委員会視察(小松市)

 11月8日 建設経済常任委員会で小松を視察しました。内容の概要は次の通りです。

【視察テーマ】 SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)の取組について

★視察先に選定した理由

 SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)とは、農林水産省が行う認定事業で、地域における食文化と農業体験などを組み合わせ、観光宿泊の周遊ルートを申請し、認定されれば、国の省庁が連携して海外に情報発信し、観光ツアー客や個人旅行客などの取り込みにつながる取り組みです。

 藤沢市においても、藤沢、茅ヶ崎での漁業、寒川での養豚といった食文化、藤沢宿の歴史などを組み合わせた計画を申請してますが、これまで認定に至っていません。そこで、茶懐石や報恩講料理、九谷焼などの体験を組合わせた取組で認定を受けている、小松市を視察先に選定したものです。なお視察では、認定を受けている、一般社団法人こまつ観光物産ネットワーク(平成31年3月DMO法人化)の方から話を伺いました。

【小松市における「農泊 食文化海外発信地域」取組計画の概要】

1.ビジョン・目標

(1)コンセプト

 「百姓の持ちたる国」での饗応御膳と風土の体感

(2)地域の概要

・小松市は石川県の西南部南加賀に位置し、人口は約11万人。霊峰白山と日本海に囲まれ、自然と文化に恵まれた地域。

・市の面積の大半を占める里山は、ヤマメ、イワナ、鮎などの川魚、高品質の米、伝統野菜などを育む。

・2300年前から続く、ものづくりと石の文化の歴史と功績が評価され、日本遺産に認定(平成28年)。

・江戸時代以前、「百姓の持ちたる国」として、約100年にわたり農民が統治。それにより報恩講料理が町衆に根付く。

・前田利常公の小松城入城を機に加賀百万石の茶文化や懐石料理が町衆文化として伝承される。

・これらの文化は、九谷焼に添えられ、緻密で繊細な芸術作品に仕上げられている。

(3)手法

 3つのルートを設定し、外国人へのPRと受け入れを図る。

(4)地域の課題

・国内外ともに認知度が低い。

・各種団体の連携不足。

・食文化や食育を担う人材の育成。

・少子高齢化による地域活力の低下。

(5)課題に対する施策

・「食・農体験」ツアーを開始。

・農泊を見据えた受入体制の充実。

(6)ターゲット国

 台湾、中国、アメリカ。

(7)ターゲット国に選定した理由

・台湾は、デイリー運航のため留学交流が期待される。

・中国は、週4便運航のため、富裕層のニーズに対応できる。

・アメリカは、欧米諸国の中で来県者が多い。

※現在は、フランスもターゲット国にしているとのことでした。

(7)KPI(平成33年度目標値)

・ターゲット国のべ宿泊者数19,500人。

 ※平成29年度は約12,500人、30年度は約15,000人。また、外国人全体では、目標は30,000人で、平成30年度は25,800とのことでした。

2.地域の食と関連性のある地域資源

(1)前田利常が成熟させた町衆文化「茶の湯」と懐石料理

 1640年に、加賀前田家三代利常公が小松城に隠居し、裏千家・仙叟宗室(千家四代)を茶頭茶具奉行として召抱えたことで、茶道の普及が始まった。宗室は城に出入りする商人や、町役をしていた町人にも茶道を教えたため、茶の湯が町人にも広がった。茶の湯には茶を楽しむための懐石料理(一汁三菜が基本)があり饗応の席にも取り入れられている。

(2)「百姓の持ちたる国」報恩講料理

 1474年、小松にある蓮台寺城で大規模な一向一揆「文明の一揆」が勃発し、真宗王国が加賀に誕生した。その後、織田信長に制圧されるまでの約100年、加賀は「百姓の持ちたる国」として、門徒農民中心の自治国となった。現在も小松には浄土真宗の寺院が数多く存在し、毎年10月~11月に親鸞聖人の遺徳をしのぶ「報恩講」という仏事が開かれる際は、集まった人をもてなすための精進料理(報恩講料理)が供されている。

(3)こまつの食文化に影響を与えた北前船と松尾芭蕉

 北前船により北海道から昆布とニシンが安宅港(小松)に運ばれたことで、伝統料理が大きく変化した。松尾芭蕉が賞賛した小松の代表料理「小松うどん」には昆布だしが使われ、江戸時代から続く郷土料理「大根寿し」は源助だいこんとニシンを麹で漬けたものである。

(4)自然と文化に育まれた数々の名品

 地理的表示(GI)登録の加賀丸いも、ノーベル賞公式晩餐会のアフターパーティーで2年連続使用の銘酒「加賀の月」など、多様な食材を育む。

3.周遊ルート

(1)ルート1

 前田利常公による産業振興で華開く町衆文化と懐石料理を体験する旅。

(2)ルート2

 白山信仰や信仰心に由来する食の系譜「報恩講料理」体感ルート。

(3)ルート3

 日本の原風景が残る「環境王国こまつ」を巡る旅。

4.平成30年度~33年度計画

『ソフト面』

(1)ツーリズム

 平成30年度 モニターツアー実施/31年度 ルート実践展開/32年度 ルート実践展開/33年度 ルート実践展開

(2)人材育成

 平成30年度 ボランティアガイド研修会/31年度 ボランティアガイド研修会/32年度 ボランティアガイド研修会/33年度 ボランティアガイド研修会

(3)伝統料理継承

 平成30年度 メニュー多言語化など/31年度 観光客アンケート調査/32年度 伝統料理の取扱拡大/33年度 伝統料理の取扱拡大

(4)交通整備

 平成30年度 レンタサイクル運営検討/31年度 ツーリングガイド育成など/32年度 ツーリングガイド運営など/33年度 ツーリングガイド運営など

『ハード面』

(1)農泊施設整備

 平成30年度 農業体験宿泊施設改築/31年度 農業体験宿泊施設運営/32年度 施設運営の状況調査/33年度 施設運営の状況調査

(2)情報発信、案内

 平成30年度 Wi-Fiエリア拡充など/31年度 Wi-Fiエリア拡充など/32年度 Wi-Fiエリア拡充など/33年度 Wi-Fiエリア拡充など

【視察での主な質疑】

・元々あった蔵を県外から来た若者が改築して宿泊施設としたとのことだが、地域住民との間での課題はあるのか?⇒地域住民が手伝うなど関係は良好。

・同様な施設は他にあるのか?⇒この1軒。農業体験には至っていない。

・計画にあるツーリングガイド育成とは?⇒まだできていない。拠点施設へのレンタサイクルを考えている。

・SAVOR JAPANの取組で、観光客が増えたという実感はあるのか?⇒実感するには至っていない。

・計画を実施することに係る経費について、国の支援はあるのか?⇒SAVOR JAPAN枠のような補助もあるので、展開していくうえで国の支援はある。

【まとめ】

 今回は、SAVOR JAPANの認定を受けている小松市を視察しましたが、小松市における食文化として、茶懐石、報恩講料理、小松うどん、ふぐの粕漬、加賀丸いも、日本酒の酒蔵などに加え、石の文化や九谷焼などもあり、周遊ルートが魅力的だからこそ認定されていると感じました。

 藤沢では、シラスを中心とした魚介類、藤沢トマトをはじめとした農産物、藤沢炒麺、むふじさわ生ハム、寒川のマスクメロンなどの農水産物、藤沢宿、茅ヶ崎の浜降祭、地引網体験など文化資源、その他、藤澤浮世絵、江の島、農家レストランいぶき、寒川神社、茅ヶ崎館などを組合わせた周遊ルートで認定に向けた取組がされていると聞いています。しかし、仮に認定された場合、海外からの観光客の受入れに対して多言語対応、宿泊施設なども含めて十分な体制が出来ているとは言えません。SAVOR JAPANの認定を目指すには、多くの課題があると認識した視察となりました。


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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