11月7日、建設経済常任委員会で福岡県久留米市を視察しました。視察の概要は次の通りです。
【視察テーマ】 久留米シティプラザについて
★視察先に選定した理由
現在、藤沢市民会館については、複合化での建替えに向けて、令和4年度に基本構想が策定され、令和11年度末の供用開始に向けて検討が進められています。本年8月の特別委員会には、生活・文化拠点再整備基本計画として、「OUR Project マスタープラン」の素案が示されましたが、その中で、議会側から、市民中心の施設運営のほか、市外からも誘客ができるホール規模と興業の考え方について、意見がありました。そこで、本市の現行のホール規模と同等規模で、比較的近年に整備された、久留米シティプラザを視察先としたものです。
【久留米シティプラザについて】
久留米シティプラザについて、シティプラザ総務課の末次さん、田中さんに、施設の概要について説明を受けた後、施設見学をさせていただきました。
1. シティプラザの位置づけ(整備の背景)
市民会館施設の老朽化、学会等の受け皿となる施設不足、商業施設の閉店などの背景から、次の整備の方向性を立てた(平成23.2)
(1)ホール機能(演劇、舞踏、コンサート、大規模会議などの多目的ホール)
(2)創造機能(市民などが演劇や音楽等の練習や創作、発表の場)
(3)交流機能(市民などがそれぞれの交流を深め、ネットワーク化を図る場)
(4)コンベンション機能(学会等の多彩コンベンションや展示会等の場)
2. 整備事業費
整備事業費は、177億円で、合併特例債が125.8億円、市の実質負担額は51億円とのこと。合併した都市の特徴であり、交付税措置も含めて、藤沢市では期待できない財政計画でありましたが、特定財源の確保が必要と感じました。
3. 久留米シティプラザの基本理念
(1)基本理念
賑わいと憩いが調和する「文化」・「活力」の創造空間
(2)基本機能
➀文化芸術振興の拠点 人が輝き、感動・創造を生む文化拠点
➁広域交流促進の拠点 人・もの・情報が行きかう広域交流促進拠点
➂賑わい交流の拠点 人が憩い、やすらぎ、楽しさを感じる街なか広場
4. 施設概要
(1)ザ・グランドホール(大ホール)
優れた音響性能持つ音楽を主目的としたホールで、クラシック、オペラ、ミュージカル等の高品質な鑑賞に対応。座席数は1,514席。
(2)久留米座(中ホール)
演劇を主目的として、袖舞台を持つ399席。
(3)Cボックス
リハーサルの練習や発表会・展示会などで、144席。
(4)その他
その他、展示室・和室・スタジオ・六角広場(約1,300㎡)・六ツ門テラスなど。
5. 施設の利用
(1)文化芸術振興事業
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ミュージカル、演劇など
(2)久留米ならではの演劇や音楽、伝統文化など
有馬大茶会と柳原展、藤井フミヤコンサート、演劇、第九なと
(3)こともの創造力、感性を高める事業
子ども向けの鑑賞事業やワークショップの実施など
(4)文化芸術の裾野を広げる教育普及事業
アウトリーチ事業(病院、福祉施設、コミュニティセンターなど)
6. MICE等の実績について
(1)平成30年度26件/令和元年度35件/令和2年度11件。1件当たり延べ4,000人規模だが、コロナでの影響は受けている。
(2)施設稼働率
大ホールはコロナ前の平成30年度では、83.6%で、全国平均66%に対して83.6%となっています。
(3)組織体制(令和5年度)
行政正職員10人/専門スタッフ職員27人/任期付き職員5人。部隊技術サポートとして、業務委託で10人。
7. 収支状況
平成28年度▲7億51,136万円/29年度▲6億8,826万円/30年度▲6億5,824万円/令和元年度▲6億1,808万円/2年度▲6億2,037万円/3年度▲6億2,651万円/4年度▲6億4,069万円。
8. シティプラザの成果
(1)年間来場者数 約1.7倍に増加
(2)経済波及効果
消費行動効果は、年間14億5千万円(令和元年度)と推計
(3)中心市街地の空き店舗率 18.0%(平成27年度)⇒13.4%(令和元年度)へ改善
(4)市内ホテルの宿泊者数 43万4千人⇒46万9千人(令和元年度)と8.1%上昇
(5)シティプラザ近隣の地価
六ツ門町114,000円⇒139,000円 21.9%上昇
日吉町171,000円⇒216,000円 26.3%上昇
9. 運営に対する評価
(1)シティプラザか開館して文化芸術の鑑賞機会が増えた人の割合
平成28年度14.4%/29年度25.6%/30年度32.8%/令和元年度—/2年度—/3年度26.8%/4年度27.0%
(2)貸館利用者へのアンケート(令和4年度)での評価
「施設利用の満足度」は、大変満足とまあ満足で99%、「また利用したいか」に対しては、是非利用したいと条件が合えば利用したいが99.6%。
10. シティプラザの課題
(1)文化芸術事業面の課題
➀鑑賞者の掘り起こしや育成、アウトリーチなど普及啓発の充実
➁地域資源を活かした文化の創造・発信の強化
(2)施設運営及び経営面の課題
➀財政負担の縮小
➁新たな収入の確保
➂更なる施設稼働と集客の工場
➃集客効果を地域経済に活かす連携の強化
(3)運営体制面の強化
➀専門的能力を持った人材の育成・確保
➁今後の運営形態の検討
【視察での主な質疑】
収支について、文化芸術振興の中で、赤字ととらえるのか、市民に届けられていると捉えるのかが重要と思うが?⇒文化行政としては必要なコストと思う。一般会計約1,400億円規模からすれば、妥当と考えている。
こうすればよかったと思う点は?⇒もう少しコンパクトにすればよかった。
藤沢市では複合化する予定だが、久留米市は単体での整備だが?⇒元々市民会館の代替プラスMICEとした。
運営遺体の検討について、期限はあるのか?⇒ないが、数年間で検討して方向性を決めていく。
元の市民会館の場所は?⇒JR駅よりにあった。
百貨店跡の再開発が九州のトレンドか?⇒特にはない。
【まとめ】
合併特例債を活用したとのことで、藤沢市民会館再整備の収支計画には参考になりませんでしたが、市民利用と久留米市にゆかりのあるアーティストのコンサートの開催などとのバランスをとっていることが確認できました。藤沢市議会で意見の在る、儲けるコンサートという視点はなかったと感じました。しかし、大ホール(1514席)は、最新の音響施設を完備しており、また、中ホールでは、逆に音が響かない施設にしており、公演の種類により受入れ体制ができていました。藤沢市民会館再整備にあたり、こういった施設について市職員が視察をして、より良い市民会館になるように願う視察となりました。また、以前に伺った福岡市も同様でしたが、全国規模・地方規模の各学会の会合などを誘致するMICEについては、本市でも優先度が高いと感じました。
※以上、報告とします。 写真は中ホールの様子です。