6月3日 13:30より、荒川区役所において、子どもの貧困対策について視察をしてきました。まず驚いたのは、結果的に私と永井議員の2人で伺うことになったのですが、エレベーターを降りると、おそらく議会事務局職員と視察項目の担当課の人たちだと思いますが、多くの職員の皆さんが、ようこそ!と拍手で迎えてくれたことです。こんな受け入れは初めてですし、とても恐縮してしまいました。更に、並木区議会議長、北川副区長から、歓迎の挨拶もいただき、本当に申し訳ないぐらいの思いでした。西川区長の「みんなでつくる幸せのまち」という理念が全体に浸透しているからできるのではないかと思いました。
子どもの貧困対策について荒川区では、客観的に研究したうえで対策を検討するという考えで、まず、公益財団法人「荒川区自治総合研究所」を設立して、研究をすすめ、平成23年8月に「最終報告書」を公表し、その報告を受けて、プロジェクトチームを設置して検討を進めてきたとのことでした。
子どもの貧困は、貧困のリスクを抱えた家庭に、「決定因子」が組み合わさって発生するため、リスクを持った家庭のシグナルを早期に発見し、包括的にリスク軽減の方法を提供することで、子どもの貧困・社会排除の状態に陥ることを回避するとしています。
具体的には次のような取り組み(抜粋)をしているとのことでした。
1. 産後うつ傾向や育児不安等の症状を持つ親への精神科医による個別相談。
2. スクールソーシャルワーカーの配置・増員。
3. 子ども家庭支援センターの相談体制の強化(虐待防止)。
4. DVに関する職員向け講座の実施。
5. 配偶者暴力相談支援センターの設置。
6. 良好な学習環境にない子どもへの学習支援(小学5年~中学3年の無料学習塾)。
7. 家庭相談の充実(家事事件の専門知識を持つ職員の配置による家庭内の紛争や離婚相談への対応)。
8. 保育園における早期発見体制の充実(子育て相談員専門員の増員)。
9. タブレット端末を小中学校1人1台体制(家庭でのタブレット所有格差の解消)。
10. 子どもの居場所づくりへを行う団体への補助。
11. 保護者の学び直し事業(高卒認定試験支援事業)。
12. 自然体験事業にて、思いやりの心と生きる力を育む(荒川区自治総合研究所の研究テーマ)。
★具体的な取り組みの中で注目した取り組みとしては、子どもの居場所づくりです。内容は、次の通りです。
① 16時頃 【準備】 ボランティア集合・近隣商店街へ食材の買い出し
② 17時頃 【開始】 学校を終えた子どもたちが入室・学習支援・子どもの出来事の共有・夕食の準備
★学習は、ここで育った先輩が教える良い流れになっているとのことです。
③ 18時頃 【夕食】 みんなで夕食
④ 19時頃 【団らん・自由行動】 食事の後片付けを手伝った子どもたちから自由な時間を楽しむ・学習、集団討議、発表会、講演会など
⑤ 21時頃 【終了】 保護者へ帰宅メールを送信・全員で片づけ、個別フォロー
★スタッフも含めて約30人を超える人数が交流しているとのことでした。そして、特徴なのは、運営している団体が、自主的な取り組みとして実施しているため、国の補助の条件である委託事業ではなく、団体への補助を区の単独費で対応しているとのことでした。
藤沢市でも、この6月議会の補正予算に計上される、子どもの生活支援事業で同様な取り組みを予定していますが、委託事業と聞いており、荒川区のような自主的な取り組み団体への補助とは少し違う感じがします。居場所から進学した人が、次の世代を率先して支援していく流れを作り切れるかが、この事業のポイントだと感じました。
荒川区役所を後にして、次に具体的取り組み3の荒川区子ども家庭支援センターに行き、センター所長から話をうかがいました。このセンターの役割は、子育て・児童虐待・養育などの相談業務、新たに3月からスタートした0才~1才のショートステイ事業(渋谷区日赤付属乳児院)、子育て交流サロンなどです。話を聞いて、特徴的だと感じた部分は、児童福祉法が改正されて、児童相談所が23区で設置可能になることをになり、これまで、都の児童相談所に相談しても解決できなかった虐待事例のジレンマについて、解決できる可能性が出てきたとのことでした。子どもの貧困の連鎖を断ち切るには、とにかく教育だと言われていました。私もそう思いますし、具体的にスタートする貧困対策を実施したうえで検証し、足りない部分を充実させていくことの積み重ねで、解消につながるのだと思います。
以上、視察の報告とします。