2016.11.9~11 平成28年度建設経済常任委員会行政視察

 11月9日~11日、藤沢市議会建設経済常任委員会の行政視察が行われました。概要は次の通りです。

1. 長崎市【まちぶらプロジェクト】

 長崎市が、「陸の玄関口」である長崎駅周辺と「海の玄関口」である松が枝周辺の整備により、今後の10年でまちの形が大きく変わっていこうとしている中で、歴史的文化や伝統に培われた長崎の中心部である「まちなか」においても大きな契機と捉え、賑わいの再生を図るものとのことです。

 新大工から浜町を経て、大浦に至るルートを「まちなかの軸」と設定し、軸を中心とした5つのエリアにおいて、それぞれの個性や魅力の顕在化などを進めるための整備をソフト施策として進めているとのことでした。
 それぞれのエリアについて、歴史や伝統などを踏まえたコンセプトがつくられていました。新大工エリアでは、商人のまちを継承する「商店街・市場を中心としたふだん着のまち」、中島川・寺町・丸山エリアでは、町屋を継承する「和のたたずまいと賑わいの粋なまち」、浜町・銅座エリアでは、「長崎文化を体感し、発信する賑わいのまち」、館内・新地エリアでは、出島・中華街・唐人屋敷のつながりを継承する「中国文化に触れ、食を楽しむまち」でありました。

 具体的な施策は、道路整備、文化的施設整備、公園整備、トイレ整備、誘導サイン整備、商業振興助成、民間ビル建替、拠点広場整備、商店会連合会との連携事業、まちなみ整備への助成、歳時記のカレンダーなどでありました。

 説明を受けた後、1つのエリアを歩きましたが、文化・歴史的資源について、改めてその魅力を顕在化し、活かす取り組みがされていると感じました。藤沢市においても、藤沢宿を中心とした街並み継承地区で、同様な取組みがされていますが、ごく一部での取り組みになっていることや、文化・歴史的資源に連続性がないため、回遊性の向上に至っていないと感じています。
 長崎市での視察は、どうしたら歴史や文化を感じられる一体的なまちづくりができるか、そういう点では大変参考になりましたが、藤沢市とは待っているポテンシャルが違うため、同様の取組は難しいと感じました。

 また、長崎市のプロジェクトの具体的事業は、土木企画・土木維持・道路建設・出島復元整備室・みどり・商業振興・観光推進・文化財・まちづくり推進・都市経営室・地域医療室などの多くの課で実施していますが、その全ての取りまとめ役が、今回視察で説明いただいた、「まちなか推進事業室」だそうで、進捗管理もすべてしているとのことでした。こういうプロジェクトの進め方が理想だと思います。

2. 北九州市【ロボット関連事業について】

 北九州市の特徴を活用して、ロボット関連産業の集積と開発・実証拠点化をめざしており、その取組について説明を受けました。特徴は次の通りです。
 
【国家戦略特区を活用した規制緩和等でロボット開発拠点化を推進】

① ロボット関連技術の活用拡大を見据えた「先進的介護」の実証・実験
② 将来の無人走行を見据えた自動車運転技術の開発・実証
③ ドローンを活用したインフラ検査等、各種実験や実証空間の提供
※当面は、介護ロボットを進めていくとのことで、視察の説明は介護ロボットの取組が中心となりました。

【ロボット、自動車等の企業集積を生かした市場拡大】

① ロボットメーカーと協働で開発時からの共同開発でマーケットを創造
② 集積した自動車メーカー向けの車載用機器等の開発
③ 「産業用ロボット導入支援センター」を活用した中小企業用のパッケージロボットの開発
④ ロボット活用人材を拡大するための取組み(制御・プログラム実習等)

【充実した研究開発体制、豊富な理工系人材の活用】

① 学術研究都市の研究者(人口知能、自動運転、自律型ロボット等)が集積
② 豊富な理工系人材(4,500人/年:大学・院・高専)の活用が可能
③ 九州工業大学社会ロボット具現化センター、産業医科大学等の研究機関との連携
④ FAISロボット技術センター、介護ロボット普及推進会議、福祉用具プラザ等の活用

~介護ロボットの取組み~

(1)北九州市のポテンシャル(産官学)

 産としては、移乗アシスト装置、脊髄損傷患者向け歩行アシスト装置などを手掛ける(株)安川電機、ベッドサイド水洗トイレのTOTO(株)、コミュニケーションロボット「パルロ」の富士ソフト(株)、歩行リハビリ支援ツールのベンチャー企業のリーフ(株)など、世界的に有名なロボット企業があるとのこと。
 官としては、北九州市介護ロボット普及推進会議、福祉用具プラザ、ロボット技術センターがあり、学としては、厚生労働省が設立した産業医の育成・労働者の健康を守るための産業医科大学、九州工業大学の社会ロボット具現化センターがあるとのこと。
 この産官学の連携により、「研究開発」「実証」「評価」の拠点を形成しているとのことでした。

(2)介護人材不足への対応策

 介護従事者の負担に替わるロボットの活用を視点を持ち、北九州市の挑戦として、①介護職員が将来展望をもって働き続けることのできる介護現場の創造/②テクノロジー(ロボット・ICT等)の活用により介護職にやさしい職場環境づくり/③必要な人に質の高い介護サービスを提供できる持続可能な制度運用を掲げているとのことでした。

(3)ユニット型特養の共同生活室の特例使用

 共同生活室を活用した介護ロボットの実証実装として、「1ユニット1共同生活室を設置」とされていた基準を緩和し、隣接する2つのユニットが交流し、共同で日常生活を営むための場所をつくり、ロボット等の活用や、開発・改良に関する実験ができるように条例改正をしたとのことでした。そこでは、介護職員、入居者の視点を踏まえたうえで、①食事介護/②団らん・レクリエーション/認知症予防・重症化予防・身体機能の維持について、(1)で示したロボットの実証実装を実施したとのことでした。

(4)「先進的介護」の実証実装の事業スキーム

 ①介護ロボット導入による作業効率化と介護の質向上/②介護従事者の負担軽減による労働環境の改善、高齢者等の新たな雇用機会の拡大/③介護ロボットの市場拡大によるロボット産業の振興を目的として、まずは、作業分析を行ったとのことでした。介護者の負担分析、そして、人間がしなくても良い部分をロボットで。施設実証と評価をして、市条例改正など、新運営基準による社会実装の中で、介護職員の負担軽減を検証するというものです。ここで大事なのは、実証の中で、ロボットの定量評価手法、評価基準の確立をすることです。その結果を法制化することで、ロボットの導入・普及できることとなり、介護報酬をロボットにを目標に取り組んでいるとのことでした。
 この目標がすごいと思いました。本気で介護者の負担を軽減するには、最終的に法制化が必要で、そこを具体的に求めていることについて、本気度が伝わってきました。藤沢市の取組の中で、法制化を率先して行う視点は残念ながらありません。この視点は、常に必要だと思いました。

(5)「先進的介護」の実証実装の年次計画

 ①平成28年度 ロボットの評価基準の確立
 
 ②平成29年度~30年度 施設運営の新基準策定

 ③平成30年度~31年度 特区効果の評価・検証

 ④平成32年度 第8期介護保険計画への反映 ※ロボットへの報酬を反映させたいとのことでした。

 このほか、産業用ロボットの取組についても、先進的な説明を受けましたが、割愛します。なお、産業用ロボットについては、相模原市でも同様の取組をしていると伺いましたので、参考にしてはどうかと思いました。

3. 福岡市【「観光MICE都市・福岡」の実現に向けて】

 視察で示された資料は、すごくポジティブなつくりになっていました。その概要は次の通りです。

◎増加する福岡市の人口【人口増加率5.1%=政令市1位】

◎伸びる市税収入【税収の伸び率 政令市11位⇒1位】

◎急増するインバウンド需要【平成23年度59万人⇒26年度120万人⇒27年度208万人】

◎クルーズ船の寄港が急増【12年連続の横浜港を抜き、全国1位】

◎伸び続ける国際会議開催件数【7年連続、全国2位】

 このような状況で、福岡市としては力点を①誘客(プロモーション)/②MICE振興/③魅力づくり/④観光の産業化に置き、取り組みを進めているとのことでした。その中で、大変興味があったのが、②MICE振興であります。

 MICEをネットで検索すると、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一つの形態。参加者が多いだけでなく、一般の観光旅行に比べ消費額が大きいことなどから、MICEの誘致に力を入れる国や地域が多い。日本でも、インバウンド振興策の一環として、国や自治体により誘致活動が盛んに行なわれている。ということでした。

 福岡市としては、このMICE振興に力を入れており、今年の6月には、第99回ライオンズクラブ国際大会が開催されたとのことでした。参加登録者数は、約38,000人、経済波及効果は試算で約112億円、延べ宿泊数は試算で約11万泊と大変規模の大きい大会です。
 福岡市内の宿泊キャパは、24,000~25,000部屋で、稼働率も80%を超えており、予約できないとの声があるとのことでした。多くのホテルが、ビジネスホテルのため、グレードの高いシティホテル誘致のため、容積率の緩和の検討がされているとのことでした。

 もう一つのアイデアとして、気になったのが「ユニークべニュー開発」というものです。これは、公園、美術館、博物館、商店街、歴史的建造物、史跡などを活用して、MICEのウェルカムパーティーや市民交流をするもので、城址公園で試行的に行ったとのことでした。
※この取組については、公共施設でのウェルカムパーティーをする場合、飲食が予想され、施設によっては条例・規則で飲食が禁止がされている。条例・規則の改正をして取り組んでいるのか?と質問をさせてもらいました。まだ試行の段階で、その部分は課題と捉えているとのことでした。私は、条例・規則に則って施設運営をすることは当然大事なことですが、条例で禁止されているからダメということではなく、ならば、条例改正して、おもてなしをしよう。という発想が必要だと思います。ずっと前に決められたものは、新しい時代の発想には合致しません。変えていく議論をどんどんすべきだと思います。

 福岡市は、人口155万人の年で、大型クルーズ船が寄港する港、空港もあります。姉妹都市も横浜市、大阪市と規模が大きいです。従って、具体的な取組みは規模からして、あまり参考にはなりませんでしたが、MICE振興は、決して国際会議だけが対象ではないので、このMICEの視点を藤沢市として取り入れることは重要だと感じました。

 以上、平成28年度建設経済常任委員会行政視察の報告とします。 


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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