2月16日の藤沢市議会2月定例会初日、鈴木市長より、平成29年度施政方針+財政計画の説明がありました。内容の抜粋は次の通りです。
【はじめに】
この1年間を振り返ると、4月には「ふじさわ交流館」、7月には「藤澤浮世絵館」を開館した。一昨年オープンした「藤沢市アートスペース」とあわせ、市民の誇りとなる、藤沢の歴史と文化芸術に触れる3つの場と機会を設けることで、市民の交流、文化の発信などの新たな広がりが生まれた。また、リオ五輪での藤沢ゆかりの選手の活躍や、辻堂駅開設100周年を祝う取り組みがあった。
一方、昨年は職員の不祥事が相次いで発覚し、市政への信頼が大きく損なわれた。この現実を受け止め、内部での調査、検討の結果に加え、外部の有識者からの意見を踏まえて、再構築していく。これからの個性ある持続的な社会の形成に向けては、市民の「郷土愛」と行政の「実直さ」を基本、基礎とし、市政運営の総合指針と行財政改革基本方針を基軸として取り組んでいく。
【新たな行財政運営への挑戦】
市の中期財政を見通すと、急速な少子・超高齢化に伴う扶助費やインフラの再整備、老朽化に対応する経費の増加と市税収入の減少などにより、歳入歳出の見込みに、大きな乖離が生じてくることが予測される。「前例踏襲」「マニュアル偏重」といった姿勢を改めながら、先見性と実行力を兼ね備えた、新たな行財政改革に取り組んでいく。
組織改正においては、2025年問題への対応と、藤沢型地域包括ケアシステムの効率的かつ強力な推進、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への対応、防災体制の迅速化と安全で安心な暮らしの実現などを基本的な視点としながら、部・室・課を再編し、新たな体制を構築する。
この体制のもとに、業務プロセス改革として、すべての事業を対象に、業務の目的や目標を改めて見つめなおし、業務執行体制、内容の改善を図ることで、事務作業の手順や量と質を適切なものに刷新していく。あわせて、定員管理の一層の適正化、多様な主体との連携、出資団体改革などに取り組んでいく。
また、財政改革においては、平成29年度当初予算編成から先行して試行導入した、部局別枠配分方式について、検証を行いながら、より良い手法となるよう改善を図っていく。
これら、行財政改革の成果により、未来に向けた投資の財源を捻出し、市政運営の総合指針における重点事業の確実な進捗を図ることで、市民生活の基礎となる都市力の強化を実現していく。
【郷土愛あふれる藤沢づくり】
市政運営の総合指針2020については、長期的なビジョン、目標は基本的に継承する中で、5つの重点項目を位置づけ、それぞれを「まちづくりテーマ」として定めている。この「まちづくりテーマ」に基づき、平成29年度の重点事業と関連する主な取組について説明する。
1. まちづくりテーマ1 「安全で安心な暮らしを築く」
(1)「災害対策の充実」として、江の島島内への新たな耐震性飲料用貯水槽の設置をはじめ、防災備蓄資機材の増強に向けて着実に取組を進めていく。
(2)「危機管理対策の推進」として、行政情報システムのインターネット接続を、県が構築する情報セキュリティクラウドに移行する。
(3)「防犯・交通安全対策の充実」として、11自治会・町内会、6商店街における防犯カメラの設置や、街路灯のLED化を支援するとともに、自転車を中心とした交通ルール・マナーの啓発に引き続き取り組んでいく。歩道と自転車の利用環境の整備については、地域まちづくり事業を含め、市域全体と地域の両面を捉え、バランスよく推進していく。
2. まちづくりテーマ2 「2020年に向けて、まちの魅力を創出する」
(1)「市民参加型オリンピックの推進・パラリンピックの支援」として、「(仮称)市民応援団」の設立や、組織委員会が実施する大会参加プログラムの積極的な活用とともに、障がい者スポーツを身近に感じられるよう、ボッチャの体験をはじめ、パラスポーツに関する普及啓発活動を引き続き推進する。
(2)「オリンピック・パラリンピックを契機とした都市の魅力、レガシーの創出」として、シティプロモーションによる都市の魅力向上を図るとともに、江の島の会場周辺の整備に向けた取組を進めていく。また、2018年から3年連続で予定されている、セーリングワールドカップ開催に向けた取組を進めていく。
3. まちづくりテーマ3 「笑顔と元気あふれる子どもたちを育てる」
(1)「子どもたちの笑顔あふれる学校教育の推進」として、児童支援担当教諭を市立小学校に16人配置するとともに、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーをそれぞれ1人増員し、支援教育の一層の推進に向けて取り組んでいく。
(2)「子どもの健やかな成長に向けた支援の充実」として、保育所整備計画に基づき、平成29年4月には、前年比で507人の定員増を図っていく。平成29年度中には、119人の定員拡大を予定しているが、整備計画の見直しも含め、事業者の公募や老朽化した公立、法人立保育所の再整備などにより、更なる保育環境の整備を進めていく。
2歳児までを対象とする小規模保育事業や家庭的保育事業を、保護者が安心して利用できるよう、卒園後の受け入れ先となる連携施設に対する支援を新たに導入し、切れ目のない保育を実現していく。
保育士の人材確保策の一つとして、保育士宿舎の借り上げを行う事業者に対する支援を、新たに実施する。
放課後児童クラブについては、平成31年度末までの整備計画を確実に進めるため、平成29年度には、4施設、198人の定員増を図り、目標達成に向けた積極的な整備を進めていく。
(3)「支援を必要とする子ども・若者への支援の充実」として、ニート・ひきこもり等、困難を有する若者の自立・就労に向けた「(仮称)若者サポート事業」や「ユースワークふじさわ」の取組を推進していく。
経済的に困難を抱える家庭の子どもたちが安心して夜を過ごすことができ、基本的な生活習慣の習得支援、学習支援や食事の提供を行う居場所づくりに、引き続き取り組んでいく。
奨学金については、国の制度を踏まえながら、より効果的な、本市独自の給付型制度を早期に導入するとともに、教育応援基金を新たに創設し、子どもたちの成長を支える環境づくりを進めていく。
4. まちづくりテーマ4 「健康で豊かな長寿社会をつくる」
(1)「多様な主体による支援の充実」として、高齢者、障がい者、生活困窮者をはじめ、すべての市民が、その人らしい生活を送ることができるよう、新たな地域づくりの仕組みとして、藤沢型地域包括ケアシステムの具現化を図る中で、地域の困りごとの解決や、支えあいの要となるコミュニティソーシャルワーカーを2人増員し、既に配置している3地区から5地区に取組を拡充する。
多様な支援の輪と、その活動にいざなう交流の場づくりや、担い手づくりに向け、介護予防・日常生活支援総合事業における住民主体の取組について、10月からサービスを開始する。
地域包括支援センターとこれまでの福祉保健総合相談室を改組する、福祉総合相談センターとの連携を密にし、地域生活での様々な困りごとに対応できる体制を強化するとともに、湘南台文化センター内に北部での総合相談の拠点を新たに開設する。
(2)「健康寿命日本一に向けた健康増進・介護予防等の促進」として、地域ぐるみの身体活動の促進や、健康な状態を維持するための、いわゆるフレイル予防、壮年期の健康づくりなどを市民の皆様とともに進めていく。
(3)「コミュニティの活性化による持続的な地域づくりの推進」として、現在、基本型をはじめ、市内26か所に設置している地域の縁側を、平成29年度には、空白地区の解消を念頭に増設し、身近な交流、支えあいの場と機会の創設に、引き続き積極的に取り組んでいく。
(4)「13地区のまちづくりの推進」として、地域ニーズを把握し、特色を生かしながら、郷土づくり推進会議と行政をはじめ、様々な団体とのマルチパートナーシップのもとに、合意形成や課題解決に向けた取組を進める。
5. まちづくりテーマ5 「都市の機能と活力を高める」
(1)「都市基盤の充実と長寿命化対策の推進」として、藤沢駅周辺地区の整備については、事業計画に基づき、北口デッキ整備に本格的に着手していく。
市役所新庁舎については、12月の竣工に向けて、確実な整備進捗を図りながら、防災拠点としての機能強化、市民サービスのワンストップ化、ICTを活用した市民サービスの向上、文書管理の適正化などにおいて、新庁舎の効果を最大限高めていく。
藤沢公民館・労働会館等の再整備については、3年工期の2年目として、着実に事業を進捗していく。
辻堂・善行の2市民センターについては、その改築に向け、利用者や地区住民の皆様とともに、計画の具体化を図っていく。
健康と文化の森地区については、昨年の第7回線引き見直しを受け、まちづくりに向けた検討を行うとともに、その前提となる浸水対策や健康の森の自然環境保全対策に引き続き取り組んでいく。
(2)「誰もが移動しやすい交通体系の構築」として、昨年4月に国の交通政策審議はじめとするにおいて、倉見までの延伸の意義が示されたいずみ野線については、湘南台から西への延伸に向け、神奈川県をはじめとする関係者との協議、検討を深め、着実に取組を進めていく。
高齢者などの市民の身近な交通として、住民組織により運営される地域公共交通に関しては、善行地区・六会地区をはじめ、地域の主体的な取組みを引き続き支援していく。
(3)「自然との共生に向けた環境保全の推進・エネルギーの地産地消の推進」として、市内全駅周辺に拡大した路上喫煙禁止区域を定着させ、喫煙者のマナーアップに取り組んでいく。
「エネルギーの地産地消」については、太陽光発電・家庭用燃料電池・蓄電池などの設置についての支援を引き続き進めるとともに、新たに北部環境事業所のごみ焼却発電による余剰電力を公共施設に供給する「電力の地産地消」を推進していく。
(4)「市民生活に不可欠な社会資本・経済環境の整備」として、社会資本については、超高齢化の進展などを踏まえ、空き家対策をはじめ、持続可能な住生活環境づくりの基本となる住宅マスタープランの策定に着手する。
経済環境については、生活支援などのロボット産業分野への市内企業の参入を支援するため、昨年採択した歩行支援ロボット開発に加え、新たな事業採択等の取組を進めていく。
農業、漁業から製造業、販売業まで、地域の経済循環を促し、郷土への愛着を高める取組として、藤沢らしさや感謝、おもてなしの心を表現する、個性と魅力あふれる体験や返礼品を用意した、ふるさと納税制度に取り組んでいく。
【平成29年度財政計画】
(1) 一般会計 1,527億8,400万円 (前年比107.8%)
(2) 特別会計 1,326億6,132万8千円 (前年比103.6%)
(3) 総額 2,854億4,532万8千円 (前年比105.8%)
平成29年度一般会計予算の編成にあたっては、概算要求の時点で、約55億円の収支乖離が生じていた。このため、歳出については、予算編成手法の見直し、施策、事業の見直しに全庁をあげて取組み、約20億円を縮減した。歳出については、平成29年度予算の対応だけでは財源不足を解消できず、平成28年度に生み出した財源を、16億円活用することなどにより、合計35億円の財源を捻出した。これらにより、財政指標の極端な悪化を来さぬよう留意しつつ、歳入歳出ともに様々な対策を講じて、収支の均衡を図った。
以上、報告とします。