2017.6.2 大阪市・守口市 幼児教育無償化の取組視察

 6月2日、大阪市と守口市の幼児教育無償化の取組を「民主クラブ」で視察しました。概要は次の通りです。

【大阪市】

1. 幼児教育の意義

(1)日本が成長を続けるため、社会を支える人材育成がますます重要

(2)こどもたちにしっかりと生き抜く力を身につけてもらうため、特に、道徳心・社会性、知性や体力の基礎を培う重要な幼児期に、質の高い教育を行うべき。

2. 幼児教育の効果

(1)生涯にわたる人間形成の基礎を培う

 ① 知識や技能に加え、思考力・判断力・表現力などの「確かな学力」や「豊かな人間性」

 ② たくましく生きるための「健康・体力」からなる「生きる力」の基礎

3. 導入の背景

 大阪市長選挙で当選した吉村市長のマニフェストには、幼児教育無償化はなかったのですが、市長就任後の施政方針で示されて、職員もあわてたと、背景を話してくれました。

4. 大阪市の現状

 子どもの学力は、調査によると全国平均を下回っており、教育の充実が必要。また、小学校に入学した児童が「教員の話を聞かない」「授業中に座っていられない」などの「小1プロブレム」が全国的な問題となっており、大阪市においても取り組みが必要。

5. 大阪市の考え方

(1)子どもの教育は未来への投資。無償化は、幼児教育を最も重要な分野とする明確な意思表示。

(2)すべての子どもが等しく教育を受けられる環境づくりを進める。

(3)質の高い幼児教育とあわせ、社会全体で子どもの成長を支える環境を構築する。

(4)保護者負担を軽減する側面もあり、少子化対策や子育て世帯の定住促進等も期待できる。

6. 大阪市の取組

 幼児教育と小学校教育(義務教育)との円滑な接続を進めるため、まず、平成28年度より、5歳児からの幼児教育の無償化を開始。段階的に4歳児、3歳児での実施を目指していく。

7. 無償化の内容

(1)幼稚園等保育料(1号認定)は、所得制限なしで、保育料は無料。ただし、一時預かりは別料金。

(2)保育所等保育料(2号認定)は、所得に応じた保育料のうち、教育相当額を無料。(半額程度)

(3)新制度に移行していない私立幼稚園等は、所得制限なしで、308,000円を上限として、支払った保育料等に対して、就園奨励費を助成。

(4)児童発達支援事業所は、所得制限なしで、利用者負担は無料。

8. 無償化に係るコスト

 平成28年度は、5歳児の無償化で、予算は25億2,000万円。29年度は、4歳児までの拡大で、53億7,000万円。

9. 就学前教育カリキュラム

 教育内容の質の確保として、平成27年度から、全ての市立幼稚園・公立保育所に「就学前教育カリキュラム」を配布し実践している。

10. 所感

 大阪市の幼児教育の無償化については、今回の視察の目的である「子どもの貧困対策」としての側面より、教育の質の向上や競争力をあおるような側面があると感じました。特に、就学前教育カリキュラムは、0歳から5歳児に年齢にあわせたカリキュラムを設定しており、その枠にはめるイメージがしました。カリキュラムに沿わない子どもはどう評価されてしまうのかが心配です。子どもそれぞれに個性や感覚や感情もあり、育つ家庭環境などで一人一人が違います。その違いを認め合うことが大切だと思うのです。前日に視察をした「こどもの里」の信念や方針とは違う印象を受けました。

 一方で、幼児教育無償化は、貧困対策としては有効な施策だと思います。経費についても、対応していただいた職員の説明でも、この無償化のために、別の事業を縮小したということはなく、事業精査の中で、経費を確保したとのことでした。
 藤沢市で考えた時、まずは実態の把握が必要となりますが、国の具体的実施が不透明である現在、自治体主導で検討する必要はあると考えます。

【守口市】

1. 幼児教育無償化の基本的な考え

(1)未来への投資

 子どもへの投資は、将来の守口市、そして日本を支える未来への投資。「もりぐち」は、子育て・子育ち支援を社会全体、すべての市民で支えます。

(2)女性の活躍支援

 安心して子どもを育て、また預け働ける条件を整えることで、男女がともに、その力を精一杯発揮できる社会を目指します。

(3)定住のまち守口を実現

 全国トップレベルの子育て世帯にやさしい政策を実現し、市民の定住を促進することで、活力と希望のまちづくりに繋げます。

2. 制度の概要

(1)0歳から5歳の認定こども園・保育所・幼稚園・小規模保育事業所等を所得制限なしで、利用者負担額を無償にします。

(2)新制度に移行していない私立幼稚園は、上限308,000として、支払った保育料・入園料に対して就園奨励費を補助します。

 ※認可外施設については、対象外。(今後、検討の余地あり。)

3. 無償化に係るコスト

 平成29年度予算は、6億7,500万円。

4. 財源の捻出

 必要な財源の確保については、公立保育園の民間移管(効果額約8億5,000万円)をはじめ、徹底した行財政改革により捻出します。

5. 所感

 守口市は、小児医療の無償化を平成27年4月から実施をしていますが、その背景は、大阪市内の自治体が無償化の年齢引き上げを競い合う形で実施したとのことでした。基本的な考え方の(3)で、定住のまち守口の実現とありますが、この間の人口減少になんとか歯止めをかけたいという思いが伝わってきました。大阪市内の自治体間で、住民の取り合い、特に子育て世帯や今後、子どもを生み育てる世帯の確保競争になっているのでは?とも感じました。

 また、大胆なやり方と感じたのは、公立保育所を民間に移管して経費を生み出すというものです。平成28年度に10カ所あった公立保育所が30年度には0となるとのことです。大きな理由は、公立保育所の施設の老朽化であり、公立で改修すれば、市の負担ですが、民間で改修すれば国の補助がでます。更に、人件費が大幅に縮減できるとのことです。私は、人件費が縮減できることは、民間保育所の賃金体系や経験年数など体制に課題があると考えます。施設改修で国の補助金が得られるのなら、市の運営費補助を増額して、民間で働く保育士の処遇改善を考えても良いと思うのです。
 また、守口市の職員定数は、1,364人に対して、職員数は851人です。これは、かなりの行革がされていると思います。藤沢市では、定数条例を改正して職員を増やしている状況です。行政需要に対応する体制が取られているのか、職員組合出身の立場からすると心配になりました。

 私たち「民主クラブ」としては、幼児教育の無償化は「子どもの貧困対策」という視点で考えています。大阪市と守口市の導入背景とは少し違うかもしれませんが、手法については、イメージが出来ましたので、今後の参考にさせていただきたいと思います。

 以上、報告とします。


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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