10月22日 総務常任委員会で長野市を視察しました。内容の概要は次の通りです。
【視察テーマ】 公共施設再配置地区別ワークショップについて
★視察先に選定した理由
長野市では、公共施設の再配置計画にあたり、市民ワークショップを計画策定前の段階で開催し、市民と市が一緒に考える取組みをしています。藤沢市では、公共施設再整備プランに基づいて、基本構想を策定し、地元に説明、意見を聞きながら、基本設計に反映する手法で進めていますが、辻堂市民センター再整備において、地元住民との合意形成について課題が残ったことから、市民ワークショップによる合意形成に取組んでいる長野市を視察先に選定したものです。
【長野市における公共施設マネジメント推進の取組について】
~将来世代に負担を先送りすることなく、より良い資産を次世代に引き継いでいくために~
1. なぜ「公共施設マネジメント」に取組むのか
(1)高度成長時代に整備した建物やインフラ施設が改修・更新時期を一斉に迎える
(2)税収の減少、社会保障関連経費の増大
(3)全国平均を上回る公共施設を保有
★オリンピック競技施設、6町村との合併に伴う公共施設増の要因を除いても長野市の公共施設の量は多い。全ての公共施設を将来にわたり維持していくための財源を確保し続けることは困難であり、公共施設の質と量について見直しを図るために「公共施設マネジメント」必要不可欠である。長野市の公共施設の延床面積の合計は約154万㎡であり、市民1人当たりの面積は約4.0㎡で、全国平均の3.2㎡を上回っている。
2. 長野市公共施設等総合管理計画の概要
【4つの基本方針】
(1)施設総量の縮減と適正配置の実現
新規整備の抑制、施設の複合化・多機能化、地域特性を踏まえた配置、広域的な連携。
(2)計画的な保全による長寿命化
ライフサイクルコスト縮減、長寿命化計画・施設点検マニュアル策定、耐震化の推進、基金創設。
(3)効果的・効率的な管理運営と資産活用
施設利用の促進、管理運営の効率化、受益者負担の適正化、遊休施設の利活用。
(4)全庁的な公共施設マネジメントの推進
庁内推進体制の強化、財政との連動、施設情報の一元化、職員の意識改革。
【縮減目標】
(1)公共施設の延床面積を40%縮減(今後20年間で20%縮減)
平成52年までの人口推計を基にした、将来コストの試算では、単純に床面積の削減で、今後40年間の大規模改修・更新費用の不足分を解消しようとすると延床面積40%以上の縮減が必要。しかし、市民生活への急激な影響を考慮し、当面、今後20年間で20%の縮減を目指す。
【長寿命化基本方針】
(1)事後保全から、予防保全に転換する「長寿命化」を進め、財政負担の軽減と平準化を図る。
(2)計画的な工事によるライフサイクルコストの低減。鉄筋コンクリート造の目標使用年数を80年に設定し、施設類型ごとに改修周期を定める。
(3)各施設の「中長期保全計画」を作成し、適切な日常点検等を実施。インフラ施設は、各施設毎に長寿命化計画に基づくマネジメントを実施。
【再配置計画】
(1)公共施設(建物)の再編・再配置に向けた方向性を第一次再配置計画として示す。以後10年ごとに第二次、第三次計画を策定することとし、おおむね3年ごとに進捗状況により見直す。
(2)最も多くの延床面積を占める学校施設については、「活力ある学校づくり検討委員会」の検討結果を踏まえ、機能移転や複合化による他の施設の小中学校への集約化を検討する。
(3)第一次計画策定時において、個別施設に関する計画の検討が進んでいない施設についても検討を進め、随時再配置計画に加える。
3. 市民合意形成に向けた取組について
(1)出前講座
① 公共施設の現状と課題、公共施設マネジメントの基本方針などの総論の説明を平成27年9月から28年7月にかけて、全32地区で開催(計814名出席)
② 平成29年1月から30年1月にかけては、第2弾として「公共施設等総合管理計画」の概要と、各地区の施設に係る老朽化度、利用度、費用度にかかる定量分析結果を全32地区で開催(計1,026名出席)
(2)市民ワークショップ
① モデル地区として「芋井地区」を選定し、平成28年5月から7月までに計4回のワークショップを開催し、地域住民の意見を反映した再配置案をまとめる。
② 総合管理計画では、「主に地元の方が利用する『地域施設』の再編・再配置の検討のため、市民ワークショップなどの合意形成の手法を検討し、取組を推進する」としていることから、残る31地区においても、同様の手法等を用いて、検討を進めている。
(3)ワークショップの開催概要
ファシリテーター、テーブルコーディネーターは業務委託、32地区の住民自治協議会の協力で開催。
① 目的
公共施設マネジメントの考え方への理解をいただくとともに、公共施設見直しの計画策定前の段階から、市民の皆さまと市が一緒に考える地域の公共施設に関する試みです。
人口減少時代の中、地域の賑わいや活力あるまちづくりにつながる施設の集約化、多世代交流を生み出す複合化・多機能化など、様々なアイデアを公共施設再配置計画の参考にしたいと考えています。
② 概要
・参加者は、公募も含めて30名前後とし、できるだけ幅広い年齢・性別・職業の方々に参加いただけるよう配慮する。
・地元のリーダー等「キーパーソン」にも参加いただく。
・1グループ5~6名で、出来る限り年代別のグループになるように編成。
・開催日は、週末昼間もしくは平日夜間とし、1回あたり約2時間。
・複数回(実績2~5回)にわたり討議。
・ワークショップは全て公開、飛び入り参加も可能。
(4)ワークショップの開催状況(平成29年度)
① 篠ノ井地区(8/6~9/23 4回開催 参加のべ134人)
「南部図書館、こども広場」等、篠ノ井駅周辺の公共施設再配置について検討。※前橋工科大学のプロジェクトとの共同研究事業。
各グループの意見は様々で、次の諸課題等について対応を検討する必要がある。
・南部図書館の老朽化・耐震化・狭あい化対策、整備する場所
・篠ノ井こども広場、南部勤労青少年ホーム、働く女性の家の在り方
・篠ノ井駅西口の市有地の利活用。JR貨物との土地整形化
・図書館を軸とした施設整備構想とPPP/PFI手法導入検討 など
② 朝陽地区(9/17~11/18 3回開催 参加のべ101人)
支所・公民館の建替え整備についての関心が高い。支所・公民館に対するワークショップの意見は、地元の整備検討委員会に引き継ぐ。
各グループの意見は、支所と公民館を一体的に整備する手法にまとまっているが、移転先の絞り込みには至っていない。朝陽地区住民自治協議会において、総合市民センター整備検討委員会が設置されており、ワークショップで出された意見は、地元検討委員会と支所に引き継がれている状況である。
・朝陽支所の老朽化・バリアフリー化・狭あい化対策
・移転改築する場合の場所の絞り込み、用地取得(跡地利用) など
③ 七二会地区(10/16~12/4 3回開催 参加のべ110人)
支所の建替え整備について関心が高く、JAの意向も踏まえて引き続き検討していく。
各グループの意見は、老朽化の著しい支所を建て替える方向にまとまっているが、場所については現地建替えから国道沿いへの移転まで様々な意見があった。
JAの方針が示されたことから、支所・地域活動支援課が窓口となり、具体的な検討進める。
・七二会支所の老朽化・耐震化対策、移転改築する場合の場所の絞り込み
・小学校笹平分校(休校中)施設の利活用
・JAとの調整(支所の建物・土地ともにJAとの共有) など
④ 浅川地区(11/11~1/13 4回開催 参加のべ82人)
浅川地区の公共施設再配置について、地区役員で話し合うワークショップ。
⑤ 信州新町地区(11/12~1/13 4回開催 参加のべ115人)
公募メンバー+区長中心。中学生、高校生もメンバーに加わる。「博物館・美術館活性化」及び「小学校の老朽化対策」は別途検討中。
⑥ 松代地区(11/26~1/21 4回開催 参加のべん180人)
支所周辺の中心部の検討と、小学校を中心とした周辺部の検討を実施する。松代荘及び周辺整備については別途検討中。
⑦ 大岡地区(12/9~2/11 5回開催 参加のべ156人)
小さな拠点のモデル地区であり、都市政策課と連携して開催。第1回は共通で、2・3回は「小さな拠点づくり」を中心に、4.5回は「公共施設」を中心に考えるワークショップ。
(5)ワークショップの開催状況(平成30年度 7地区)
① 戸隠地区(6/10~8/19 3回開催)
地区の活性化、暮らしやすい地区にするための公共施設再配置を中心に検討。
② 信更地区(6/17~8/26 3回開催)
地区の活性化、暮らしやすい地区にするための公共施設の使い方を中心に検討。
③ 第五地区(6/27 懇談会形式)
各区から参加者を募り、市から公共施設マネジメントについて説明し、意見交換を実施。参加者20名。
④ 第三地区(7/13~11/9 2回開催予定 区長との懇談会形式)
第1回は、市から公共施設マネジメントの説明を中心に実施。第2回は、各区長と地区内の公共施設のうち、集会施設を中心に意見交換を実施する予定。
⑤ 豊野地区(7/28~9/15 3回開催)
地区の活性化、暮らしやすい地区にするための公共施設再配置を中心に検討。
⑥ 若槻地区(9/8~11/11 4回開催予定)
これからの地区に必要な活動を行うための施設について、支所・公民館の将来を中心に検討。
⑦ 鬼無理地区(11/17~1/26 3回開催予定)
内容を協議中。
★平成31年度は、2地区については、浄化センターの建替えにより課題がなくなったこと、住民の協力が得られないため、開催しないとのことでしたが、その他の地区(13地区)については、30年度中に実施方法・日程等を協議する予定とのこと。
その他、市民シンポジウムを開催し、ワークショップの事例発表、パネルディスカッションなどを実施したとのことでした。また、若年層に対する啓発の取組として、篠ノ井高校における出前授業、清泉女学院大学とのキックオフミーティングなども開催したとのこと。
平成31年度までに全地区でのワークショップを開催し、マネジメント推進検討会や総合管理調整会議での検討を経て、平成32年度までには、個別施設計画を策定するとのことでした。
【視察での主な質疑】
・ワークショップでの視点は? ⇒ ワークショップでは、どの施設が必要で、残すべきかを話し合う。
・ファシリテーターは何処へ委託しているのか? ⇒ 日本管財へ委託しており、費用は2年契約で2,200万円。
・参加者がそれほど多くないと感じるが? ⇒ 参加者を集めることが課題となっている。
・当面のスケジュール案の中にサウンディング型市場調査とあるが、どのような調査か? ⇒ 事業を発案する前に民間事業者から意見を聞いて進めるもので、小中学校のエアコン整備手法について最善の手法の話を聞いた。その他、PPP、PFI参入の意欲の調査など。
・総合管理計画の中で、鉄筋コンクリート造を80年の設定とした理由は? ⇒ 20年、40年、60年の節目で、中・大規模改修して80年持たせる考え。
・ワークショップの前提に施設をなくすという考えがあると思うが? ⇒ ワークショップは、どんな街にしていきたいかを考えるもので、その街には、どんな施設が必要で、集約化できるか、廃止するかなどを話し合える場としている。
・市民の理解を得るためには財政状況を明らかにする必要があると思うが? ⇒ 個別施設計画をつくる上では必要と考える。
・国のコンパクトシティ+ネットワークという考えある。複合化により、今までより遠くなることもある。都市計画との関係はどうなっているのか? ⇒ 立地適正化計画をつくっているが現状は追認となっている。統廃合となると足の確保が課題となる。都市計画部門との直接的連携は難しい。統廃合案となった場合には、代替え案を示さないと理解を得られない。関係部局との連携が必要となる。
・地区をまたぐ複合化には反発があると思うが? ⇒ 地区間の比較の意見もある。まずは地区内で考えてもらう。その上で、周辺地区の施設を使えるかを考える。
【まとめ】
藤沢市では、辻堂市民センター再整備における住民合意のあり方について、地域から厳しい意見が出され、市としてもスケジュールの変更を余儀なくされ、課題を残した形となりました。長野市における公共施設再配置に向けた住民合意のあり方については、個別計画の全段階で、地区ワークショップを開催し、どのような街づくりを望み、そのためにはどの施設が必要かということを視点に話し合いが行われていました。
ただ、藤沢市と違うところは、その前提に公共施設の総床面積を今後20年間で20%削減しなければならないということです。そのことを市民と共有した上で、ワークショップで、どうあるへきかという話し合いをしている点については、藤沢市とは状況が異なります。しかし、個別施設計画、藤沢における基本構想や基本計画といったものだと思いますが、その計画前に地域住民同士で話し合うという手法は、有意義だと考えます。藤沢市における、公共施設再整備プランを進捗するにあたり、基本構想を策定する前段階で、地域住民からの意見を聞く場を今後どのように考えていくかについて、大変参考になる視察だったと考えます。
また、3年前に、長野市民会館跡地に8階建て新庁舎(第一庁舎)と長野市芸術館が合築されましたので、藤沢市民会館の再整備にも参考になると考え、芸術館も見学させていただきました。第一庁舎は8階建ての庁舎であり、芸術館との合築の事業費は、庁舎が70億円、芸術館が90億円で合計で約160億円だったと聞きました。藤沢市の本庁舎は約190億円でしたので、全体に安価との印象でした。
以上、報告とします。