11月7日 建設経済常任委員会で金沢市を視察しました。内容の概要は次の通りです。
【視察テーマ】 eスポーツ金沢モデルの取組について
★視察先に選定した理由
世界におけるeスポーツ競技人口は1億3,000万人と言われており、大会の優勝賞金も高額で市場規模も更に拡大している状況です。国内では、まだまだ認知度も低く賞金の課題などもあるのですが、先月には茨城国体の文化プログラム事業として、「eFootball ウイニングイレブン」「グランツーリスモSPORTS」「ぷよぷよeスポーツ」の3種目で都道府県対抗で競い合い、茨城県が優勝しました。
このように国内でも、盛り上がりを見せ、将来的には成長すると確実視されているeスポーツについて、藤沢市において現在のところ議論がされていないため、先進的な取組をしている金沢市を視察先に選定したものです。
【金沢市新産業創出ビジョンの概要】
1.めざす姿
(1)新たな価値を創造する拠点で、産学官の叡智を融合し新産業を創出する。
(2)第4次産業革命に対応した環境を整え、地場企業の活力や生産性を高め、世界市場を捉える。
(3)市民生活にAI・IoT・ロボット等の技術革新を活かして、暮らしを豊かにするとともに、次世代を担う子供を育む。
2.プロジェクト
(1)既存の市有施設等を活用した新たな価値創造拠点の整備(旧小学校校舎をリノベーション)
・地場企業・企業家が、大学等高等教育機関、食・工芸等専門家、士業をはじめ、金融機関・ベンチャーキャピタル、クラウドファンディング企業、技術導入支援の企業など、様々な支援者と共創・成長するコミュニティを形成する。
・子供たちが自由に楽しく学び、創造性あふれる優秀な人材が活躍でき、市民と地場企業・起業家が交流する環境を創出する。
(2)地場企業・起業家の第4次産業革命への対応支援
・5GやLPWA等の最先端インフラ、RPA等の先端技術を整え、価値創造拠点の技術・ノウハウを共有し、地場企業・起業家等を支援する。
・AI、IoT企業が集積する金沢版AIビレッジの整備を進める。
(3)世界を視座にビジネス展開のチャンス提供
・グローバル企業・人材を呼び込む世界規模の学会・イベントを誘致する。
・価値創造拠点で活躍する企業人材等を、海外先端都市へ派遣・技術交流を行う。
(4)市民生活へのAI等技術の実装
・保存と開発が調和したまちづくりに沿ったAI技術等を導入する。
・金沢美術工芸大学や金沢卯辰山工芸工房等の研究・育成機関を活用した伝統工芸と先端技術を融合する。
(5)デジタル情報時代を担う子供の育成
・子供の習熟度に合わせたプログラミング活用人材を育成する。
・小中学校におけるプログラミング教育を導入する。
【eスポーツ金沢モデル】※上記、金沢市新産業創出ビジョンの具現策の1つ
『eスポーツをまちなかに創る具体策』
(1)学生が企業インターンシップに参加し、最新のeスポーツソフト開発等を体験
(2)ゲーム心理学、コーチング技術、イベント運営、データ分析等の勉強会を開催
(1)(2)の取り組みで、次のような人づくりを図り、新たな成長産業を創出する。
・映像/音楽/デザイン等のクリエイター
・ゲーム開発者
・eスポーツとアート/心理学/コーチング技術等を融合する教育プログラム開発者
(3)国体の文化プログラム3種目の内、企業・団体共同で、老若男女に親しまれる種目の全国イベントを開催
(4)ITビジネスプラザ武蔵にeスポーツ工房を設置
(3)(4)の取り組みで、次のような企業集積を図り、新たな成長産業を創出する。
・選手をサポートする周辺機器の販売
・へルスケア
・イベント企画運営
・応援団を盛り上げる専門グッズの販売
・動画配信サービス 等
『eスポーツを地域に広げる具体策』
(1)国体の文化プログラム3種目(グランツーリスモ・ぷよぷよ・ウイニングイレブン)を活用し、各県で盛んな種目で市民が集うイベントを定期的に開催
(2)北陸三県のeスポーツ団体が共同し、年に1回、1件種目の持ち回りで、三県のプロプレイヤーが出場する大会を開催
(1)(2)の取り組みで、次のような市民啓発を図り、eスポーツりの普及を推進する。
・市民が知る
・市民が関心を持つ
・市民が身近に感じる
・市民が触れて楽しむ
・正しい知識を学ぶ
(3)イベント・大会に合わせて、司会、実況解説者、地元プロスポーツチーム応援団、動画配信者等が参加する
(4)イベント・大会時に、機材提供等のバックアップをする企業を募り組織化
(3)(4)の取り組みで、次のようなコミュニティ形成を図り、eスポーツりの普及を推進する。
・地域で盛り上がりが生まれる
・地域でファンが増える
・地域で活動が活発化する
・地域で文化が醸成される
『eスポーツイベント等の状況』
1.国内のeスポーツイベント等
(1)茨城プレ大会(全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019IBARAKI前哨戦)
平成30年9月15日/つくば国際会議場
(2)東京ゲームショウ2018(ビジネスデイ)
平成30年9月20~21日/幕張メッセ
(3)第1回全国高校eスポーツ選手権
平成30年12月(予選)/平成31年3月(決勝)※大会開催に併せて、高校でeスポーツ部を発足したし場合、PC最大5台を3年間無償レンタル
2.金沢市内のeスポーツイベント等
(1)いしかわeスポーツゲーム交流会
平成30年10月8日/金沢工業大学パフォーミングスタジオ/一般社団法人石川eスポーツ協会
(2)WCS2018ファイナル(韓国仁川)パブリックビューイング
平成30年11月3日/DMM GAMES金沢中央事業所/石川eスポーツサークル
(3)「ウイニングイレブン2019」eスポーツステージ
平成30年12月8日/金沢駅もてなしドーム地下イベント広場/金沢市、金沢市スポーツ文化推進協議会、一般社団法人石川ユナイテッド
【視察での補足説明】
・2018年はeスポーツ元年、副市長が韓国の釜山にいき、eスポーツ大会を視察し、新たな産業につながると確信した。
・日本でも48憶円市場となっており、2022年には100憶円市場となると言われている。
・そのような中で、ITのインキュベーション施設にeスポーツ工房を開設した。※個別に見学をしましたが、元々「ぷよぷよ」のむコミュニティがあったため、ゲーム「ぷよぷよ」が設置されており、無料で体験することが出来ました。
・「所詮ゲームでしょう」という意見ある。まずは触れてもらうことが重要。
・金沢市がeスポーツに取組む理由は、ゲームを作るにあたり、様々な仕事が創出される。シナリオ、プログラムなど、クリエイティブ作業があり、そういった人材育成を目指している。
・もう一つは、IOデータ機器というメーカーがあり、そういった企業の集積を目指している。
・金沢でもeスポーツはまだ広がっていない。行政としてeスポーツ関係者の声を聞くことが必要。市長とのミーティングを行った。
・10月の茨城国体で文化プログラム3種目が行われたが、金沢市としては、銃撃や戦闘のようなものでなく、家庭形のゲームを推奨していく。
・予選会も金沢市であったが、代表選手が市長を表敬訪問した。
・セガ、ナムコに学生をインターンシップ派遣している。
・プロゲーマーの賞金の課題がクリアされたので、今後広がりを見せると考える。
・ゲーム業界の仕事は地方でできる業態なので、クリエイターとして金沢に留まってもらいたいと思っている。
【視察での主な質疑】
・金沢市は観光のイメージがあるが、eスポーツに取組むということは、観光の取組は十分ということか?⇒かなり展開できている。
・eスポーツ関係の予算は?⇒450万円程度。
・何か課題はあるか?⇒ゲーム障がいについて、否定的な意見がある。
・ビジネスプラザの管理の状況は?⇒インキュベーション施設なので24時間入っている。オープンスペースを活用して「ぷよぷよ」ができるよう整備した。コミュニティも目的なのでオンラインゲームは認めていない。
・プログラミング教育とeスポーツとの関連付けは?⇒繋げられると考えている。
・eスポーツの普及啓発の取組の方向性は?⇒イベントが多くなっている。スポーツを絡めたeスポーツイベントを増やしている。
・eスポーツがコミュニティにつながることについて、どう啓発していくのか?⇒イメージの払しょくが広がっていかないなど、まだまだ心配される状況にある。
・体育とeスポーツの関係が難しいと思うが?⇒高校でeスポーツ部を立ち上げているところあるが、保護者からはいかがかという声もある。部活動化、サークル化が進むよう望んでいる。また、ハード整備に係る金銭面での課題もある。
・イベントでの経済効果が期待されるが、藤沢市で開催するためには、どういった取組みをすればよいか?⇒eスポーツ協会を通じてイベント会社などへ働きかけることが必要。
・プロ選手を目指すなら、実際はゲームばかりすることとなる。教育委員会の理解が難しいのでは?⇒その通りで、教育委員会には話をできる状況ではない。
【まとめ】
金沢市がeスポーツに取組むには、金沢市内に工業大学をはじめ関係する教育機関が多くあること、また、ゲームソフトを開発する企業などがあり、eスポーツに取組みやすい環境にあったと考えられます。更に、「ぷよぷよ」ゲームがコミュニティとして定着している環境も後押ししていると思います。しかし、まだ取組みを始めて時間が浅いこともあり、質疑でもあったように、eスポーツとコミュニティづくりへの啓発が広がっていないこと、教育との連携についてもこれからということもあり、今後の金沢市の展開に注目したいと思います。
藤沢市でも、「藤沢市ロボット未来社会推進プロジェクト」を展開し、ロボットの利活用に力を入れている状況です。eスポーツの開発とロボット技術との関連性は不明ですが、今後、予測されている通りにeスポーツの市場規模が拡大された場合、産業としての期待と大会誘致による経済効果への期待が考えられます。今すぐに取組む状況ではないと考えますが、今回の視察を契機に、eスポーツというジャンルについても注視すべきテーマになったのではないかと考えます。