3月25日 10:10より、藤沢市議会2月定例会(6日目)が開催されました。内容の抜粋は次の通りです。
令和2年度予算に対する予算討論を行いました。私が所属する「民主・無所属クラブ」からは、全ての議案に賛成の立場で、竹村議員が行いました。内容は次の通りです(全文)。なお、他の会派の討論は省略します。
令和2年度一般会計予算、ほか10議案に対する民主・無所属クラブの賛成討論を行います。
冒頭、新型コロナウイルスの問題について特に申し述べます。DMAT隊員として最前線で活躍された皆さんをはじめ、この間全力で対策に取り組んでくださった現場職員の皆さんに敬意を表します。
個々の対応についての意見は控えますが、一点だけ、「公衆衛生」と「人権保障」について要望します。
本来保護されるべき感染者や医療従事者に対する心ない扱いがすでに生じています。民族差別やヘイトクライムに不安を抱く皆さんもいらっしゃいます。藤沢市がこの間コロナウイルス対策において、「公衆衛生」と「人権保障」の両面に常に心を配って対応されたことを評価したいと思います。これからもぜひその視点を忘れずに、市民の皆さんを守るための対策を全力で進めていただきたいと要望します。
1. 全体を通して
鈴木市長の3期めがスタートしました。
いま、少子超高齢化や格差、気候危機や国際化の進展などの新たな課題を考えたとき、私たちの子や孫に持続可能な藤沢を残すためには、SDGsの視点を取り入れた長期ビジョンを構想しなければなりません。
その意味で鈴木市長が今回、市政運営の共通テーマとして「サスティナブル藤沢」「スマート藤沢」「インクルーシブ藤沢」の3つを“目指すべきまちの姿”として示し、「だれひとり取り残さない あたたかい地域共生社会の実現」を宣言されたことは、まさに時宜にかなったものと高く評価をさせていただきます。
(1)インクルーシブ藤沢
その中でも、私たちの会派がとりわけ注目したいのは「インクルーシブ藤沢」です。
「インクルーシブ」とは、あまり耳慣れない言葉かもしれません。もともとはヨーロッパで「社会的包摂」という意味で使われ始めた言葉で、「包み込む」と訳されることもあります。「社会的排除(エクスクルーシブ)」の対義語です。
学校現場ではすでに「インクルーシブ教育」として定着していますが、それをぜひ社会全体の理念として広げていただきたいと思います。
この「インクルーシブ藤沢」と表裏をなすのが、「だれひとり取り残さない あたたかい地域共生社会の実現」でしょう。
藤沢市は、たった一人の市民であろうと「誰も取り残さない」と宣言しました。
究極とも言える目標ですが、ぜひ言葉だけのものにせず、市や学校を挙げてこの理想を追求していただきたいと思います。
もとより、それは簡単なことではありません。条件整備抜きに、職員や教職員の精神論だけで対応すべきではないことは当然です。ですが“100対ゼロ”の論議ではなく、「何ができるか」を困難を抱えた当事者と一緒になって考え・悩み・代替案を含めて共に考えて行く。そのプロセスこそ、「建設的対話」と呼ばれる合理的配慮の核心だということを強く申し上げておきたいと思います。
(2)サスティナブル藤沢
「サスティナブル藤沢」について申し上げます。
かつてない酷暑や経験したことのない自然災害、海洋生物の体内に大量に詰まったマイクロプラスチック。それらは、地球環境が危機に瀕していることの、私たちへの警鐘です。
藤沢市としても脱炭素化、再生可能エネルギーの地産地消など、主体的な取組をぜひ進めていただきたいと思います。
特に湘南海岸を有する藤沢にとって、海洋汚染につながるプラごみ削減の取り組みは喫緊の課題です。使用済みプラスチックのリサイクルには多額の費用とエネルギーが費やされることを考えれば、排出されるプラスチック自体の削減こそ進めるべきです。レジ袋削減だけではなく、プラスチック代替品の採用や公共施設の自動販売機からペットボトルをなくすなど、具体化な取り組みを要望します。
ただ、これには市民の皆さんにも一定の「コスト」や「不便さ」を共有していただかなければなりません。SDGsを単なる流行り言葉に終わらせず、市民の皆さんとともに「サスティナブル藤沢」の取組を進めてくださるよう要望します。
(3)スマート藤沢
IT技術の進歩は、私たちの社会に大きな変革をもたらしました。たくさんの可能性を秘めた「スマート藤沢」の実現に期待します。
テクノロジーの活用は行政がもっとも遅れている分野でもありますが、そのような中、いま注目されている概念がパブリテックスです。
パブリテックとは「先端技術を用いて社会課題を解決すること」を指し、行政のテクノロジーの活用により共生社会の仕組みづくりと社会イノベーションを創造することを目的としています。
本市の持つフィールド等を民間の実証実験の利用などに積極的に開放し、行政・地域・社会のデジタル化・スマートシティ化、テクノロジー活用による社会課題へのアプローチを推進していただくよう要望します。
また、交通アクションプランの計画見直しにおいて、昨今のモビリティサービスの多様化やMaaSの技術を見据えた改定をお願いします。
(4)行財政改革
つぎに、財政課題と行財政改革について申し上げます。
中期財政見通しについては、将来にわたり財政健全性を維持するよう計画的な財政運営に資することを目的としており、その意味を否定するものではありません。
ただ財源不足の数値のみに焦点が当たるなど、市民の間に誤解が生じたことも事実です。今後、現在の財政健全性や他市比較における優位性などについて市民への丁寧な説明に努め、財政状況の共有をしっかりと図られるよう要望します。
行財政改革は重要な課題ですが、それによって市民サービスの低下を招くことがあってはなりません。また、市民サービスを担う職員の皆さんの雇用・労働条件が安易に切り捨てられることもあってはなりません。
一例として、市民会館の再整備にかかわって、会館の管理運営を担っている職員の雇用について、設置者として責任を果されるよう重ねて要望します。
会館で働く職員の皆さんの間には、この先の雇用について不安がつのっています。早急に雇用問題について、関係団体と協議して解決するよう強く求めます。
(5)市民との合意形成
続いて、市民との合意形成についてです。
自治体の政策は、市民の理解と協力なしに進めることはできません。
人々の価値観や利害が多様化する中で、市民と行政との合意形成は容易ではありませんが、なにより藤沢市は市民参加の先進自治体だった歴史を持っています。その歴史をふまえ、市民参加の政策づくりに取り組んでいただきたいと要望します。
自治体の合意形成を図る手法としては、専門性を持った関係者が一堂に会する「会議形式」が基本です。しかし、この手法だけでは限界があります。
平日働いている現役世代や子育て世代、子どもや青年が参加しやすい「広い」市民参加のための合意形成プロセスも構築しなければなりません。
「デジタルガバメント」は行政手続の電子化だけでなく、市民広聴や政策立案への市民参加にも活用できるはずです。
インターネットを用いた会議はICTの進展により当たり前になってきています。過去、藤沢市がこの間取り組んできたノウハウを活かし、発展させるような仕組みを構築することを求めます。
以上、総合的な意見を申し述べました。このように考えて行くと、「インクルーシブ」と「サスティナブル」「スマート」は、別々のものではありません。それぞれを有機的に連携させ、「だれひとり取り残さない あたたかい地域共生社会の実現」の実現をめざしていただきたいと要望します。
さて、こののちは5つの「まちづくりテーマ」に添って意見・要望を申し上げます。
【安全で安心な暮らしを築く】
(1)防災対策
東日本大震災から9年が経ちました。大規模地震と津波への対策は、藤沢にとっつねに立ち返るべき、防災の原点です。
昨年、大川小学校事故に対する仙台高裁判決が確定しました。判決はその中で、「ハザードマップの浸水想定区域外だということは、その場所の安全を意味するものではない」という非常に厳しい指摘をしています。
これは学校教育だけの問題ではありません。津波避難施設を兼ねる鵠南小学校の改築を急ぐとともに、「災害に想定外はありえない」という立場に立って、あらためて防災対策を点検・強化されるよう要望します。
また従来は障害者や高齢者を始め、要支援者は「福祉避難所」へ、という考え方が中心でした。
ですが、避難者はそれぞれに様々な課題を抱えています。避難所は女性に対して十分な配慮ができているでしょうか。高齢者や外国にルーツを持つ方たち、慢性的な疾患を持つ方たちなども、少なくありません。
熊本地震の際には、熊本学園大学のユニバーサルな避難所の取り組みが注目されました。福祉避難所の整備を進めると同時に、あわせて避難所自体のユニバーサル化についてもご検討くださるよう、要望します。
(2)犯罪抑止
いま犯罪の抑止については、罪を償い終わった人の「再犯防止」や「社会復帰支援」が重要な課題となっており、司法と福祉、さらに居住支援部門の連携が進められています。
その意味で今回、再犯防止が民生費にも位置づけられたことは、重要なことと評価します。市役所分庁舎を更生保護の拠点として活用し、加えて犯罪被害者への支援、そして「もうひとつの被害者」と言われる犯罪加害者家族への支援にも取り組んでくださるよう要望します。
【「2020年」に向けてまちの魅力を創出する】
(1)オリンピックと若者文化
ボルダリング、サーフィン、スケートボード、BMXなどについては愛好者を含めた競技人口は国内300万人を超えると言われています。また、近年、注目を集めているeスポーツについてもIOCはオリンピック競技への採用について、議論を深めています。
こうしたストリートカルチャーやエクストリームスポーツなどの若者文化は、オリンピックだけでなく本市のストリートカルチャーとしてしっかり根付いてる事実がある一方で、ハード・ソフトともに環境整備が整っていないといえます。
本市には日本や世界を代表するようなストリートカルチャーやエクストリームスポーツの地域人材が存在します。若者文化に携わる市民一人一人が主役となり、協働連携して環境を構築していただくよう要望します。
(2)オリンピックとレガシー
オリンピック憲章は「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」と定めています。
私たちの会派は、オリンピックのレガシーとはこのオリンピック憲章の精神の具現化でもあると指摘してきました。
昨年、川崎市に住む在日コリアンの女性に対して悪質な脅迫・嫌がらせヘイトを行って罰金命令を受けたのは、藤沢市に住む51歳の男性でした。
藤沢市もヘイトスピーチについて当事者意識をもって、「藤沢の課題」としていっそうの啓発を進めていただきたいと要望します。悪質化しているインターネット上の部落差別については、モニタリングに取り組み、発見した場合にはただちにプロバイダーに削除要請を行うなどの取り組みと、本人通知制度の周知を要望します。
去る16日、横浜地方裁判所は津久井やまゆり園事件の植松聡被告に死刑判決を下しました。しかし、これで事件が終わったわけではありません。植松被告のような差別意識や、社会に存在する制度や慣行としての社会的障壁は、依然としてなくなってはいません。私たちの心の中に潜む「小さな植松」を根絶するために、障害のある・なしにかかわらず共に生きる社会の実現をめざす取り組みを要望します。
また藤沢市が「同性パートナーシップ制度」の創設に向けて検討を開始されたことに、おおいに期待します。
増加を続ける外国人市民や外国につながる市民の課題を含め、ぜひ「人権尊重のまちづくり」を藤沢のレガシーとしてくださるよう要望します。
【笑顔と元気あふれる子どもたちを育てる】
(1)「共に育つ」
一昨年実施した「子どもと子育て家庭の生活実態調査」をふまえ、先般「藤沢市子ども共育計画」が策定されました。
この計画で特に注目したいのは、「社会のあらゆる分野において、子ども・若者の年齢や発達の程度に応じて、子ども・若者の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されなくてはなりません。」と、「子どもの参加する権利」を明記したことです。
おりしも藤沢市議会は昨年の12月議会において、湘南台高校の生徒の皆さんから提出された「ハツシユタグ#ふじキュン課」を設置してほしいとの陳情を趣旨了承しました。
これも、単にそのような名称の課を設置してほしいと言うよりも、子どもや若者を一人の主権者として認め、藤沢市の政策に当事者の声を反映させてほしい、と言う主旨でもあります。
特に子どもの居場所づくりにおいては「大人が居させたい場所」ではなく、「子どもが居たい場所」を考える視点をぜひ持っていただきたいと要望します。
なお、この「当事者の声を聞く」という立場は、子どもだけではありません。障害者や、認知症の高齢者などについても同様です。「私たち抜きに、私たちのことを決めないで(Nothing about us,without us)」という障害者権利条約のスローガンを、ぜひすべての政策立案の基本としていただくよう要望します。
(2)困難を抱えた子どもたちへの支援
「子どもと子育て家庭の生活実態調査」の結果からは、依然として深刻な「子どもの貧困」の現実が読み取れます。もちろん「経済的貧困」だけが子どもの抱える「困難」ではありません。ですが、「経済的貧困」が様々な「困難」の最大の要因であることは厳然たる事実であり、一般論に解消しては意味がありません。
経済的貧困は子ども・若者が自分の未来を選ぶことのできない「希望の格差」につながっています。公正・公平なスタートラインに立てていないのです。その意味で鈴木市長が先頭に立って実現して下さった藤沢市の給付型奨学金は、子どもや青年に「未来の希望」を保障するたいへん貴重な施策です。国の制度にはない中退防止のためのアフターフォローなどを含め、いっそうの改善と拡充を要望します。
(3)学校の働き方改革
「笑顔と元気あふれる子どもたちを育てる」ためには、学校教育が持続可能なものでなければなりません。
今日、教職員の多忙が社会的に認知されるようになってきたことは、同時に「教員のなり手不足」という深刻な副作用を生みました。このままでは学校教育は持続可能性を失い、崩壊しかねません。「教員不足」の問題に対処するため、教職員の働き方改革をいっそう進めるとともに、教職員定数改善や免許更新制度の抜本的な見直しを、国に強く求めてくださるよう要望します。
また、スクールロイヤーの早期配置も要望します。もちろん「理不尽」と思える保護者の言動であっても、その背景にはわが子を思う切実な気持ちがあります。けっして安易に「モンスター」などと呼ぶことがあってはなりません。ただ、一方で教育的対応だけでは限界があることも事実です。教職員自身の遵法意識・コンプライアンスの向上という目的ともあわせて、早期の導入をお願いします。
(4)インクルーシブ教育
インクルーシブな社会を作るためには、子どもの頃から障害のある・なしにかかわらず共に学び・育つ「インクルーシブ教育」の実現が欠かせません。
藤沢市の「インクルーシブ教育」は、先進的な取り組みとして一定の評価を得てきました。しかしそのことが障害のあるお子さんをお持ちのご家庭の転入増につながり、特別支援を受ける児童生徒の急増の一因ともなっています。
特別支援学級の全校設置を急ぐとともに、知的・情緒だけではなく医療的ケアの必要な子どもたちへの合理的配慮、限界を迎えつつある白浜養護学校の抜本的な設備改善など、藤沢のインクルーシブ教育を持続可能なものとするための施策を要望します。
(5)子育て支援
保育園や児童クラブの問題で忘れならないのは、「育児・子育て」と「仕事」の両立に悩む保護者への理解の促進です。「働き方改革」は長時間労働の縮減だけではなく、育児・子育てに理解のない“ブラック”な職場や社会環境の是正でもあることを申し述べておきます。
待機児解消に向けた保育園の増設と定員拡大の取り組んみを評価します。ただこれまで論じられてきたように、待機児が生まれる背景には、保育士さんの不足も大きな要因としてあります。保育士さんの賃金・労働条件の改善と人材確保に引き続きとりくんでいただくよう要望します。
また「困難な保護者への対応」は、幼稚園や保育園についても深刻な課題です。スクールロイヤーの活用も含め、また法人立保育園への支援についてもご検討くださるよう要望します。
(6)放課後児童クラブ
放課後児童クラブの急速な拡大に伴って、児童クラブの担い手について課題が生じています。みらい創造財団が運営する放課後児童クラブについては、クラブ長の業務や責任の負担が重く、離職につながっています。
現在、市内6ブロックにブロック長を配置していますが、ブロック長はクラブ長との兼務となっています。
ブロック長が配置されたクラブを複数配置にするなど、関係団体との十分な事前協議の上で、児童対応の質の向上と離職防止に向けた対策を検討されるよう求めます。
(7)子どもの居場所
過日、藤沢市議会が連携して「カフェトークふじさわ」に取り組んだ関東学院大学牧瀬ゼミの学生の皆さんから、藤沢市政についてのプレゼンがありました。この中で共通して提案があったのは、子どもの望む「居場所」はコンクリートの箱の中ではなく、「元気に外遊びができる場所」だということでした。これは私たち大人が忘れてはならない、大切な原点です。
その意味で「少年の森」は大切な場所です。いっそうの施設改善と、市内全域での「元気に外遊びできる場所」の拡充を要望します。同時にこのような場所では、子どもたちの安全確保のため「人」の確保も重要です。少年の森では少数の職員で安全確保に取り組んでいるため、年休取得、特にその性質上夏季休暇が取得しにくい状況にあります。早急な対応をお願いします。
【健康で豊かな長寿社会をつくる】
(1)藤沢型地域包括ケアシステム
3月12日の神奈川新聞社説は、藤沢の「藤沢型地域包括ケアシステム」を他の自治体のモデルとなり得る先進的なものとして、高く評価してくれました。この間の担当職員の皆さんのご労苦に、心から敬意を表するものです。ぜひ、「だれひとり取り残さない あたたかい地域共生社会の実現」を目指して取り組みを進めていただきたいと思います。
「だれひとり取り残さない」取り組みの前に立ちはだかるもののひとつが、日本の社会に依然として存在する差別や偏見です。生活保護受給者に対する負のレッテル張り、依存症患者への無理解、一度罪を犯した者の社会復帰を妨げる偏見。もし「だれひとり取り残さない」と言うのであれば、まさにそのような人たちであっても「取り残さない」のでなければなりません。
困難を抱える人たちを自己責任論で切り捨てるのではなく、その人たちの困難を生む社会的障壁に働きかけ・環境改善を図る役割を、「ソーシャルワーク」と呼ぶのだ、ということを、あらためて確認したいと思います。現実に、CSWやSSWの皆さんは、そのような複合的な困難事例に取り組んで下さっています。
ぜひ「個人モデル」ではなく「社会モデル」の立場に立って、「だれひとり取り残さない あたたかい地域共生社会の実現」を目指していただきたいと要望します。
また、「住まいの貧困」への対応も重要な課題です。地域包括ケアの論議の重要な柱として、「断らない住居確保」に向けて居住支援協議会のいっそうの充実を要望します。
(2)介護
社会構造の変化に伴い「ヤングケアラー」や「ダブルケア」、さらには年間10万人を数える介護離職など、介護をめぐる新たな課題が浮かび上がっています。私たちの会派は、介護は「される」人だけではなく「する」人にも要介護者と同じ水準のケアが必要だと申し上げてきました。
今回「家族介護者等(ケアラー)支援」を明確に打ち出してくださったことは、高く評価したいと思います。ケアラーに必要な支援は、単にレスパイトだけではありません。従来の「介護者支援」とは、いわば「より良い介護のための介護者支援」でした。しかし、これから求められるのは「ケアラーが、介護によって自分の仕事や生活、趣味や学業など自分の人生をあきらめなくてすむような支援」ということです。
そのような視点に立ったものとしての「ケアラー支援」を推進し、「ワーク・ライフ・ケア・バランス」の実現を目指してくださるよう要望します。
また藤沢市での調査が基礎データとなった「ヤングケアラー」については、先日毎日新聞の連載も始まり、ようやく社会的な注目を集めるようになってきました。引き続き支援の手立てを検討するほか、「精神疾患を持つ親をケアする子ども」や「外国につながる親を支える子ども」など、これまで光の当たらずに来た子どもたちへの支援にも取り組んでくださるよう要望します。
(3)ひきこもり
藤沢市がいわゆる「ニート・ひきこもり等の若者」支援のために「ユースワークふじさわ」を立ち上げ、支援に取り組んでこられたことはおおいに意義のあることと評価します。ですが「8050」問題が言われるように、いわゆる「ひきこもり」は若年層だけの問題ではありません。また支援窓口を作ったとしても、家から一歩出ることにさえ困難を抱えている方を救うことはできません。加えて本人だけではなく、孤立しがちな家族へのサポートも必要です。
「ユース」だけではなく「ワーク」に限定されない、家族も含めた事業の展開を要望します。また、実態調査と、アウトリーチ型支援の充実を要望します。
(4)母子保健
核家族化や晩婚化が進行する中で、産後の母親の心身の不調、さらには産後うつや子ども虐待を防止するためには、母親の身体的回復と心理的安定を促進し、母親が自立して育児を行うことを支援する環境整備がぜひ必要です。「産後ケア」システムの早期の整備を要望します。
【都市の機能と活力を高める】
(1)文化政策
文化政策は都市の魅力と活力を生む重要な政策です。藤沢の魅力は豊かな湘南の自然に加え、遊行寺や藤沢宿に象徴される歴史に裏打ちされた文化財にもあります。
藤沢市の歴史的建造物は民間所有のものが多く、その維持保全は志のある所有者個人の負担に多くを負っています。ですがこれには限界があり、相続に際して歴史的建造物が失われてしまうことも少なくありません。桔梗屋などを始めとする貴重な建築物の維持についても、懸念が生じます。先般の三觜家住宅の轍を踏むわけにはいきません。ぜひ実効ある文化財保護政策をお願いします。
(2)鵠沼海浜公園スケートパークのP-PFIについて
現在、鵠沼海浜公園スケートパークのPark-PFI活用に係るマーケットサウンディング調査が行われています。
スケートパークは本市では唯一の施設であり、スケートボードやBMX、インラインスケートなどの愛好者にとって代替の効かない極めて重要な施設です。
藤沢市スケートボード協会をはじめとした関係団体や利用者の意見を事業に反映するよう、要望します。あわせて藤沢市においても、日常的にスケートボードが楽しめるプレイグランドの充実などを通して、子どもをはじめとする愛好者のマナーアップと、競技力の向上及びスポーツ精神の普及を目指し、スケートボード競技の環境発展に取り組んでいただきたく要望します。
(3)都市の魅力と活力としての多様性
藤沢の魅力と活力をはぐくむもうひとつの大切な柱は、「ひと」の魅力と力です。これからの藤沢はますます国際化が進むことは間違いありません。また先進的な福祉の取り組みによって、障害のある・なしにかかわらず共に生きるまちづくりも進んでいます。それらの「多様性」こそ、藤沢の魅力であり活力です。
同性パートナーシップ制度の導入に取り組むとともに、人権条例の制定も含め誰も取り残さない、だれもが「自分らしく、ありのままに」くらせるまちづくりを要望します。
「違い」を力として、「サスティナブル」で「スマート」で「インクルーシブ」な藤沢を実現させていただきと申し上げ、民主・無所属クラブの賛成討論とします。
~採決~
議案第92号 令和2年度藤沢市一般会計予算
議案第93号 令和2年度藤沢市北部第二(三地区)土地区画整理事業費特別会計予算
議案第95号 令和2年度藤沢市国民健康保険事業費特別会計予算
議案第97号 令和2年度藤沢市介護保険事業費特別会計予算
議案第98号 令和2年度藤沢市後期高齢者医療事業費特別会計予算
議案第99号 令和2年度藤沢市下水道事業費特別会計予算
※以上の6議案については、共産党が反対しましたが、賛成多数で可決しました。
議案第94号 令和2年度藤沢市墓園事業費特別会計予算
議案第96号 令和2年度藤沢市湘南台駐車場事業費特別会計予算
議案第100号 令和2年度藤沢市民病院事業会計予算
議案第75号 藤沢市職員定数条例の一部改正について
議案第77号 藤沢市非常勤職員の報酬等に関する条例の一部改正について
※以上の5議案については、全会一致で可決しました。
~追加議案~
議案第101号 令和元年度一般会計補正予算(第8号)
新型コロナウイルス感染に伴い補正するもので、歳入歳出それぞれ、7,256万4千円を追加し、歳入歳出1,571億8,480万1千円とするものです。
1. 交通安全運動費(繰越明許費の設定)
自転車マナーアップ運動の啓発品について、新型コロナウイルス感染の影響で物品調達に遅延が生じたため。
2. ファミリー・サポート・センター事業費 59万6千円
新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策(第2弾)に係る国の補正予算を活用し、小学校、幼稚園、保育施設等の臨時休業に伴う利用料を補助するもの。
3. 市立保育所運営費 705万円
新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策(第2弾)に係る国の補正予算を活用し、公立保育園において必要な備品等を購入するもの。
4. 法人立保育所運営費等助成事業費 3,015万円
新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策(第2弾)に係る国の補正予算を活用し、市内法人立認可保育所及び地域型保育事業所に対し、必要な備品等の購入に係る費用を補助するも。
5. 放課後児童健全育成事業費 3,476万8千円
新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策(第2弾)に係る国の補正予算を活用し、小学校の臨時休校により開所延長した児童クラブに運営費等の負担をするもの。
6. 観光施設台風被害復旧等対応費(繰越明許費の設定)
新型コロナウイルス感染症に伴い、年度内の完了が見込まれないことから繰越明許費の設定をするもの。
7. 健康と文化の森整備事業費(繰越明許費の設定)
新型コロナウイルス感染症に伴い、年度内の完了が見込まれないことから繰越明許費の設定をするもの。
原田委員
児童クラブについて、必要経費を補助することだが、市の単独の支援が必要だと思うが?⇒55クラブを運営している、みらい創造財団において、夏休みと同様に非常勤職員に給与に加えて上乗せ支給している。
国の加算に加えて、市として支援すべきだが?⇒福祉や医療従事者を踏まえると、児童クラブだけでよいか検討していく。
~補正予算常任委員会~
議案第101号 令和元年度一般会計補正予算(第8号)
味村委員
保健所運営費について、市内保育施設の新型コロナウイルス感染防止の取組状況は?⇒家庭で寝保育が可能なら、登園をひかえるようお願いをしている。職員の手洗いなど徹底している。
消毒液購入の見通しは?⇒事業者へ入り次第、納品をお願いしている。
児童クラブについて、国庫負担で十分なのか?⇒臨時休業に伴うもので補正予算の確保で対応できると聞いている。
石井委員
幼稚園や幼児教育施設への補助は?⇒今回の対応策は、幼稚園にも補助メニューあり、県より連絡しているが、認可外施設については国から通知がない。
西委員
保育所運営について1園あたり、どのくらいの補助があるのか?⇒1施設当たり50万円。
児童クラブは約16万円だが、足りるのか?⇒マスクは1施設当たり100枚配布している。
※この議案については、全会一致で可決すべきものと決定しました。
~本会議再開~
議案第101号 令和元年度一般会計補正予算(第8号)
※この議案は、全会一致で可決されました。
議案第102号 副市長の選任について
副市長について、「和田章義」氏(現経済部長)と「宮治正志」氏(現副市長)を選任したいため、市長より、議会に同意が求められたものです。この議案は、全会一致で同意されました。
議案第103号 教育長の任命について
教育長について、「岩本將宏」氏(現片瀬中学校校長)を任命したいため、市長より、議会に同意が求められたものです。この議案は、全会一致で同意されました。
※その他、人権擁護委員候補者の推薦、個人情報保護審査会委員の委嘱について、全会一致で、市長依頼の通り決定しました。
※以上をもって、藤沢市議会2月定例会が閉会となりました。