11月21日 10:30より、藤沢市議会議員研修が開催されました。この研修は、藤沢市議会基本条例で位置付けられているものです。概要は次の通りです。
1. テーマ 「本市のDX推進について」
2. 講師 藤沢市DX戦略推進プロデューサー
【中林優介プロデューサーの講演】『藤沢市DX推進に向けて』(抜粋)
(1)Fujisawa DXの方向性
➀藤沢市を取り巻く状況
藤沢市は、住みやすいまちとして高評価である一方、旧住民と新住民との軋轢、交通渋滞、高齢化、エネルギーコスト増、物価高、コロナ対応など、市民生活に課題が多い。
※より住みやすいまちを実現していくために、DXによる課題解決、市民生活の向上を図っていく。
➁DX戦略推進プロデューサーのミッション
藤沢DXとは、藤沢市民のためのデジタル・トランスフォーメーションを実現するために、自治体DXの推進、地域のスマートシティ化によって、職員・市民がDXにより目指す『ありたい姿』を実現していくことに伴走する。
➂これまでの取組
DX・スマートシティ基本計画策定、デジタル推進室・各部局と伴走したDX施策の推進、研修等を実施。
・自治体DXの推進(DX推進計画策定)
各課から258案件の提案を受ける。10テーマで人材育成研修を実施。
・地域のスマートシティ化
LINEアンケートによる5,400人の市民の声を収集。40人の市民と市民対話を実施(11/23)。
・藤沢デジタル・トランスフォーメーション=市民のためのDX
23部局長ヒアリングの実施(年明けに第2回を実施予定)。4月に所属長研修(対象140人)を実施。
※部局長ヒアリング・DX案件募集から見えてきた主な課題
・職員は優秀だが、DX実現に最適なツールや方法論を知らない(分からない)。
・DXにより成し遂げたいゴールが不明瞭
・基礎的インフラと構造的ネットワークの課題
・DXを推進する際、予算がつかない、つけてほしいが、常につきまとう。
・スーパーシティの迷走
※DX研修アンケート結果
・研修全体の満足度は高い一方、変革の難しさに対する実感の声も聞かれた。
・外部人材であるプロデューサー自身の振る舞いが与える好影響もみられた。
(2)スマートシティの取組
➀スマートシティとは何か
従来のような完結提供型の都市ではなく、常に生まれる新たな課題に対して、デジタル活用で対処、新しい価値を提供し続けるまちづくり。目まぐるしい社会の変化に対応し、藤沢市民のニーズ(現在と未来)を捉え続けた、長期的視野(数十年~)のまちづくりが必要。
➁市民ニーズ分析
・愛着度に年代の違いはないが、継続居住意向は年代が上がるほど高まる傾向がある。
・居住年数が長い層ほど、愛着度・継続居住意向は高い。
・愛着度は北高南低の傾向にあり、特に御所見地区は継続居住意向と合わせて低い水準。
・大庭地区の施設、公園充実度の評価が高く、交通アクセスは地区の特徴を反映。
・市民の声は、厳しい意見もあるが、市の取組を応援してくれている方々もいる。
➂藤沢市の目指すべきスマートシティとは
地域・ライフスタイルにより異なる市民ニーズを捉え、市民とともに歩みながら課題を解決するため、藤沢市役所デジタル推進室スマートシティ担当+各課による『One Fujisawa』(産官学民連携)によるまちづくり実現の旗振り役を担う。
8つの基本目標【安全・安心/市民自治・地域づくり/都市基盤/地域経済/健康・福祉/教育・子育て/環境・エネルギー/文化・スポーツ】に向け、藤沢市民の課題・ニーズ(少なくとも地区単位)を捉えつつ、企業・大学や研究機関とも連携し、市民参加型プロジェクト推進による市民を巻き込んだまちづくりを実現する。
(3)更なるDX推進に向けた取組の方向性
➀藤沢DX推進上の課題
1年間活動して見えてきた課題(プロデューサー目線)
『理事者』
・トップマネジメントの打ち出し⇒個別テーマにおける思いを込めた意思決定・判断
・トップからの明確な方向性の打ち出し⇒庁内に対するより積極的な情報発信
『デジタル推進室の運営』
・プロジェクトマネジメント⇒プロジェクト型への働き方の変革
・人員不足⇒戦略的増員の意思決定
・予算権限⇒推進室に一定の予算枠が必要
『各部局からの打ち返し』
・管理職の壁⇒DXの取組への更なる協力の要請
・現行業務の繁忙⇒DXテーマへの戦略的リソース投下
・その他⇒見えていない課題に対してDXリーダーへの聞き取りなど
➁取組の方向性
40万藤沢市民の1%でも力を借りることができれば4,000人の職員に該当するパワーを得られるので、市民との共創による巻き込みが必要。
『これまでの行政の考え方』
これまでは、市民ニーズ=あるべき姿として、一方通行の市民ニーズに応えるために職員が身を粉にして働き、職員が疲弊。
『これからの藤沢市の姿』
これからは、職員・市民がともに考えるありたい姿として、社会の変化に伴う市民ニーズ・価値観の変化に対応して、市民と協働してまちづくりを推進。
※私(中林プロデューサー)が考える藤沢市の『ありたい姿』は、『日本一働きたい市役所』であり、『世界一住みたい街』であってほしい。職員が、誇り、愛着、やりがいをもって働ける市役所に。日本一に甘んじることなく、世界一の街を目指しましょう!
(3)講演での主な質疑
・4月の各部局長とのヒアリングについて、教育委員会も入っているのか?⇒入っている。市民病院も入っている。
・市民の目線とは、具体的にはアンケート結果か?⇒アンケート結果だけでは見えてこないところもあるので、11/23に市民40人によるワークショップで直接市民から話を聞く。市民センターやまちづくり協議会などにも話を聞いていきたい。
・日本一働きたい市役所について、何らかの指標はあるか?⇒ランキングはないが、企業では、従業員の満足度と売り上げ、時価総額との相関関係は明確になっている。
【森義貴プロデューサーの講演】『藤沢市におけるDX推進のために皆さんと共有したいこと』(抜粋)
(1)なぜ、今、DXに向か合わなければいけないのか?
業務の効率化のため?、行政のスリム化のため?、デジタル時代へ対応するため?ではなく、『人の価値』の再定義をすること。例えば、デジタル回覧板、現在のアナログな回覧
板を効率化したいと、よくある自治体のDXとして行われる取組。ただ、仕事の効率化をあげるためにテクノロジーを導入すればいいのか?
誰でもできることはテクノロジーに任せる。人は人にしかできないことに注力を。それが『人の価値』の再定義と創出である。
(2)「今問題がない」は、本当に問題がないのか?
・「何も問題が起きていない」=「正しい状態」なのか?
・起きた問題を解決した時、その解決方法は、そもそも問題が起きた取組の目的に寄与しているのか?
・その問題は、誰の視点で問題なのか?
※「問題」の本質がどこにあるかを捉えることが重要。
変革の『蜜』は、必ず働く人にも。民間企業では顧客満足度を高めるために業務の効率化を図るが、そこに従業員満足度が高くなければ顧客満足度につながらない。市役所も同様に、市民満足を高めるには職員の満足度が高くなくてはならない。誰かが頑張って支える仕組みではなく、すべての人々に恩恵がある仕組みが必要。
(3)デジタル市役所は藤沢市に何をもたらすのか?
・デジタル市役所を作ることは目的ではない。
・なんでも電子申請ができることが目的ではない。
・全組織がLINEを使うことが目的ではない。
・職員の数を減らすことが目的ではない。
・施設を減らすことが目的ではない。
※多様性にあふれた社会を支える価値ある公共組織にしていくこと。
【ハイコンテクスト文化】と【ローコンテクスト文化】
日本は、ハイコンテクスト文化と言われ、曖昧な表現を好み、聞き手の責任が重い。一方、ローコンテクスト文化は、明確な表現を好むため、与えられた業務以外の業務は求められない。今後は、デジタル市役所としていく中で、例えば電子申請に限るのではなく、電子が苦手な市民には職員が対応するなど、日本の良いところと欧米の良いところが混在したダブルスタンダードで対応していく市役所が求められるのでは。多様な価値観に基づいて、自分にとっての『良い』を決められるように。『なぜ行政が』を常に明確にし、支援が必要な市民を助けられる組織へ。
(4)講演での主な質疑
・住民票をコンビニで取得しようとしたが出来なかったので、市民センターに行ったらすぐに取れた。どこに課題があるのか?⇒最初が肝心。サービスデザインが重要となる。利用者目線で考えることが重要。
・雇用の流動性について、市役所職員にもあるのでは?⇒自分のモチベーションを発揮できる調整も必要となってくるのではないか。
・藤沢市には65歳以上10万人以上いる。どう巻き込んでいけばいいか?⇒難しいと思う。全てを巻き込むことは考えない方がいい。やりたい人への機会をどう作っていくかが重要。自分に必然性がなければやらないので、成功体験を身近に感じてもらうことが重要。
※以上、報告とします。