2013.10.21-22 自治労自治体議員連合学習会(福島)

 10月21日~22日に福島で開催された、自治労自治体議員連合全国学習会に参加しました。内容の抜粋は次の通りです。

 

【10月21日】

1.JA新ふくしまを視察

 JA新ふくしまにて、農産物の放射線モニタリング状況について、説明を受けました。検査室に入ることはできませんでしたが、玄米の全袋検査に至った経過や、検査体制の流れについて説明を受けました。

 なお、福島市の9月現在で、出荷制限指示品目は、梅・ゆず・大豆・あずき・栗・ふきのとう(野生)・たけのこ・わらび・原木しいたけ(路地)・野生きのこなどです。しっかりとしたモニタリングをしているので、流通している農産物は安全との事でしたが、まだまだ、風評被害があるとの事で、正確な情報がいかに伝わっていないかということが、現地の話を聞いてよく分かりました。

 写真は、併設している直売所で販売されていた新米と袋に貼られている検査済みシール、直売所の壁に貼られている放射線モニタリング体制の説明。

 

 

 

2.飯舘村を視察

 バスで飯舘村役場に向かいました。飯舘村に入ると、放射線量が高く、居住制限区域になっているため、そこに生活感はなく、人がいれば、皆、除染作業の関係者でありました。役場に着き、役場に設置されていた線量計を見ると、0.55マイクロシーベルト/hとなっていました。藤沢は、だいたい0.06ぐらいですから、放射線量は高いといえます。ただ、役場の所の線量は他に比べて低いとの事でした。

 除染の状況を聞きました。原発事故から2年7か月が経ちましたが、やっと始まったばかり。国直轄事業だけでは進まず、畜産業の振興のための振興公社にも発注し、対応しているとの事ですが、約160人の作業で、1年間に50ha~60haぐらいしか除染できないようです。道路や宅地は高圧洗浄、田畑は重機にて表面を削り、森林は伐採や皮をむく、そして、地面の腐葉土を取り除く。森林は手作業となるので、気の遠い話です。実施率は、宅地59世帯/1,700世帯で4%、農地約280,000㎡/19,000,000㎡で2%、森林約310,000㎡/約12,000,000㎡で3%、道路約22,000㎡/約3,600,000㎡で0.6%です。

 このペースでは、単純計算でも数十年もかかります。しかも、国の定める年間1ミリシーベルトまで、放射線量を下がらない。しかし、飯舘村を再生させるために、なんとかやっているとの事でした。なお、除染した土や腐葉土や枝などは、仮の仮置き場に置かれていますが、27,000袋と莫大な量となっています。

 私たちがバスで視察できたように、飯舘村には自由に入ることができます。 避難している住民も、避難先で精神的に厳しくなったら、自分の家に帰ってきて、気持ちを落ち着かせるようです。空間の放射線量が高いので、良いか悪いかは、何とも言えないけれど、そういう状況だと言います。除染していない農地などが、思うほど荒れていないのは、年に1回、住民が集まって草刈をしているからだそうです。これも、良いか悪いかは別といいます。やはり、自分たちの場所が大切なんだなあと思いました。

 写真は、飯舘村役場の線量計、仮置き場の様子、除染の様子と除染された田んぼ。

 

 

 

【10月22日】

3.原子力災害と地域再生への課題(清水修二氏:福島大学教授)

 福島大学教授の清水氏から、原発事故からの地域再生について、講演がされました。

(1)事故の規模

 原発事故による「強制避難」は、約84,000人。チェルノブイリ事故では、135,000人。ただし、チェルノブイリ事故の避難面積は、福島の16倍。

 双葉町の放射線量は、町の中心部が最も高く、2012年3月31日現在で、年間100ミリシーベルトを超えている。この地域は、空間線量の予測で、10年後でも、年間20ミリシーベルトとなっている。家屋から半径20mを除染しているが、森林に囲まれている地形のため、雨が降ったりすれば、また、線量が上がってしまう。

(2)県外避難状況

 9/12現在、県外への避難者は、51,251人で、神奈川への避難者は2,225人。県内への回帰については、山形県への避難者が一番多く、約半数は戻っているが、東京、千葉といった首都圏への避難者は、ほとんど戻っていない。

(3)福島に対する中傷

 人口の97%は県内に住み、3%が県外に避難を含めて住んでいるが、福島に対する中傷は多くある。

 「放射線管理区域で暮らしている」 「福島で子育てするのは犯罪的だ」 「子どもがどんどん癌になっている」 「子どもを少しでも保養に出して」 「福島の子どもと現地で交流なんて、とんでもない」 「奇形児が生まれるぞ」 「被ばくはゼロでなければ嫌」など。

(4)心の分断

 ①被害者同士が対立する悲劇

 中の人 「除染ができてから戻ってくるのですか」

 外の人 「親の都合で子どもを犠牲にするのか」

 ②農産物の生産者と消費者の対立

 生産者 「検出限界値未満です。食べてください」

 消費者 「ゼロじゃないんでしょ。食べません」

 ③賠償金が引き起こす摩擦や対立

 「原発で食べてきた人たちが、今度は原発事故で食べている」原発事故での避難には賠償金が出るが、津波による避難には賠償金は出ない。

(5)福島とチェルノブイリとの違い

 福島原発事故による汚染状況は、チェルノブイリ事故に比べて、大気放出の放射能は15%、汚染の面積は6%程度。ベラルーシ住民はどのくらい被ばくしたのか?3万人の子どもが1,000ミリシーベルト超の被ばくをした。福島はどうか?1歳児の甲状腺被ばく線量の最大値は、双葉町、いわき市が1番多く、それでも30ミリシーベルトでチェルノブイリ事故とは比較にならないと言う。

 情報伝達について、チェルノブイリ近接のプリピャチの住人、約45,000人の避難は、事故から36時間後、30キロ圏は、1週間後、汚染地図の公表は事故から2年以上が経ってから。

 事故後の対策について、チェルノブイリの被災地では、住民は移住が基本で帰還は考えず。これは、社会主義国で、土地は国有、家屋や仕事も政府が提供しているため、実現できるもので、自治体は消滅。一方、日本の被災地では、住民の帰還を想定、自治体も存続する。

(6)ベラルーシに何を学ぶか

 ①起こしてはいけない事故が起こってしまった現実に、正面から立ち向かうこと。

 ②汚染された大地で汚染されていない食べ物を作るということ。

 ③疑心暗鬼を乗り越え、公的な情報が信じられる状況をつくるということ。

 ④同情するより、子どもたちに自分の命を守る方法を教えるということ。

(7)復興のために何が必要か

 帰還問題については、住民個々の意思を尊重するべきで、第3者は、過剰な干渉を慎んだ方が良い。被害者同士が対立している状況の克服。帰還基準の設定、チェルノブイリは年間5ミリシーベルトであり、今の国の除染基準は1ミリシーベルト。「移住」の選択と「保護区」の設定。避難者の生活再建への道筋の提示。などが必要。

※今回の講演を聞いて、チェルノブイリ事故と福島の事故では、大きな違いがあるのだなあと思いました。放射能汚染の規模などは、チェルノブイリ事故よりはるかに小さいことも分かりました。しかし、そのような規模であっても2年7か月が経った今、住民の帰還に向けた作業は、ほとんどできていない状況であり、原発事故からの再生には、本当に大きなエネルギーと時間を要するのだなあと感じました。正確な情報を得るという事、第3者は不用意に余計なことを言わないこと、結果として、被災者がさらに追い込まれるような報道をしない事などが、私は本当に大切だと思いました。被災地の実態は、被災地に行って初めて分かるのですから。

4.原発震災後のJA新ふくしまの取り組み(斎藤隆氏:JA新ふくしま常務理事)

 JA新ふくしまの斎藤氏より、原発災害後の取り組みについて講演がされました。

(1)JA新ふくしまの概況(平成25年1月末現在)

 ①正会員数 11,228人

 ②総職員数 596人

 ③販売品取扱高 72億8千万円

 正会員のうち、65歳以上の割合が51.7%を占め、かつ、75歳以上が全体の28.1%を占めている。

(2)農作物の概況

 米穀8億9,761万円/果実39億1,568万円/野菜4億9,421万円/畜産2億9,071万円/花弁7億9,807万円/特産8,910万円/直売所7億9,479万円=72億8千万円 ※果実が全体の54%を占めている。

(3)安全安心な農作物の提供のためのトレーサビリティシステム

 生産者が、日誌のようなもので、生産過程を記録、JAへ。このシステムにより、生産物の生産過程などの情報が徹底管理される。

(4)検査結果(平成23年度) 単位はベクレル/kg ND=検出限界値

 ①さくらんぼ 最高96.6 最低70.0 平均84.4

 ②もも 最高83 最低ND 平均28.8

 ③梨 最高36 最低ND 平均15.6

 ④ぶどう 最高47 最低ND 平均24.8

 ⑤りんご 最高63 最低ND 平均27.4

 平成23年5月から24年1月までに福島市内でモニタリングした野菜は、ほうれん草・はくさい・ブロッコリー・アスパラ・きゅうりはNDであった。

(5)農作物の販売高 

 平成22年度 84億5,375万円→平成23年度 66億6,000万円

 ももと梨の単価は、22年度のほぼ半額。ももの出荷量は22年度の約1.5倍。

(6)農地・樹木の除染

 果樹園全域2,200haを高圧洗浄(40~60気圧)、粗皮削りにより除染した。作業者は農家を中心に6,500人が参加、延べ50,000人。放射能低減率は、高圧洗浄で55%、粗皮削りで80%~90%。

(7)水田・畑の除染

 水田2,397ha、畑1,184haで実施。水田も畑も、耕起前にゼオライト・カリ肥料などを散布。反転耕、深耕を行う。

(8)平成24年度の農作物について

 トレーサビリティの継続、モニタリングセンターを設置、放射能検査機47台で1日最高800検体の検査を行う。農家全戸のモニタリング検査を行い、販売がされています。このモニタリングのための作業がかなりの負担になっているが、風評被害を払しょくするためにも農家が協力して行っているとの事でした。

 平成24年度産の米の検査は、全量全袋検査を実施。検査に合格した米だけが出荷される。

 ※今回の講演を聞いて、食の安全に対してJAと農家が連携して、様々な取り組みをしていることが分かりました。こういった取組をしているにも関わらず、風評被害はまだ、収まっていない。無責任な言動が、農家の皆さんをどれだけ苦しめているのか。

 現地に行って、話を聞くことで正しい知識を得ることができます。私は、今回の福島での学習会に参加して、良い経験になったと思います。更に、藤沢の議会でもたびたび議論されますが、下水汚泥焼却灰の処理問題、学校給食食材の検査、校庭や公園などの空間線量の測定など、もちろん最大、最善の対応をしなければなりませんが、福島の現地の方々にはどう映るのでしょうか?考えさせられる学習会でした。

 

 

 

 

 


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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